今週の見出し(9/28-10/4)

  • 米政権がAIを「超知能(SI)」と呼び替え、大統領令と大手各社の自主協定が同じ日に並び、週末には担当の「超知能タスクフォース」も発足
  • AnthropicのClaude Sonnet 5.5、OpenAIのGPT-6.1 Sol、GoogleのGemini 4 Argonが相次いで登場し、そろって料金の水準を打ち出した
  • NVIDIAとAppleがエージェントの権限を外側から絞る仕組みを示し、OpenAIのエージェントをめぐっては研究者の分析と差し止め訴訟が続いた
  • OpenAIの安全部門から、研究者3人との決別と安全性報告の責任者の辞任が続いた
  • BarclaysのClaude全行展開、Anthropicの1億ドルの育成計画、Amazonの地域支援など、導入と受け入れの側でお金が動いた

先週のAIを一本の線で結ぶなら、AIを誰がどう扱うかの枠組みが、法律ではなく呼び名と約束で組まれた七日間でした。米政権は行政機関の用語を「超知能」に改め、安全性の約束は企業の自主協定に委ね、週末には政策をまとめる司令塔を置いています。

同じ週、大手3社が新しいモデルを出しました。どの発表も、性能の数字と同じ重さで料金を並べています。エージェントの側では、権限をモデルの外から絞る仕組みが半導体とOSの両方から出てきました。

今週の主役

「AI」から「超知能」へ——呼び名を変えた政権と自主協定

呼び替えの起点は、前の週の米中首脳会談でした。ホワイトハウスが米国時間9月25日に公表したファクトシートで、両首脳は対象の新興技術を「超知能(super intelligence)」と呼ぶことで一致しています。

9月29日には、トランプ大統領が連邦政府の行政機関で「AI」の呼び名を「SI」に改める大統領令に署名しました。各省庁は公式の書簡や報告書、政策文書で「SI」を使い、既存の規則や契約はそのまま残します。大統領補佐官(科学技術担当)は60日以内に、SIの新しい定義を定める法案の文言を大統領に出します。

同じ日、大手テック企業のトップがホワイトハウスで安全性の自主協定に署名しました。Ars Technicaによると、20社あまりがサイバー、生物、化学の各リスクとAIの意図しない動作について外部の安全性監査を受けることを約束しています。協定に法的な拘束力はなく、トランプ大統領は「道義的な拘束力がある」と述べました。

新しい呼び名は、行政の文書にすぐ現れました。10月1日に米司法省が発表したAIサーバーの対中密輸の起訴では、発表文がAIを指す語として「超知能」を使っています。

週末の10月4日(米国時間)には、トランプ大統領がTruth Socialで「Super Intelligence Force(SIF、超知能タスクフォース)」の設置を発表しました。国家情報長官のジェイ・クレイトン氏、FTCのアンドリュー・ファーガソン委員長、国防総省の研究・エンジニアリング担当次官兼CTOのエミル・マイケル氏、人事管理局のスコット・クーパー局長の4人が率います。大統領は投稿で、SIFを自主協定に続くものと位置づけました。

3社の新モデル——性能の数字と料金を並べた発表

週の初め、AnthropicがClaude Sonnet 5.5を公開しました。料金はSonnet 5と同じ100万トークンあたり入力2ドル・出力10ドルに据え置き、同じ作業を少ないトークンでこなすため、同社のテストではタスク当たりのコストが最大30%下がりました。エージェント型コーディングの評価Terminal-Bench 4.0では70.6%を記録しています。

OpenAIは開発者向けイベント「DevDay 2026」で、常時稼働のエージェント「dots」と新モデル「GPT-6.1 Sol」を発表しました。GPT-6.1 Solは、エージェント型のコーディングや専門業務でGPT-6 Astraに迫る性能を、Astraの標準料金の5分の1で提供します。API料金は100万トークンあたり入力2ドル・出力10ドルです。

Googleは新しい最先端モデル「Gemini 4 Argon」を発表し、まず信頼できるサイバー防御の担い手に向けて提供を始めました。長い工程のソフトウェア開発を測るDeepSWE v1.1で77.9%を記録し、1回の出力の上限を100万トークンに広げています。導入期の料金は入力2ドル・出力10ドルで、導入期が終わると入力4ドル・出力20ドルになります。

3社の新モデルは、いずれも100万トークンあたり入力2ドル・出力10ドルの料金で並びました(Gemini 4 Argonは導入期の価格)。OpenAIはAutomationBenchでAnthropicのOpus 5.5を約3分の1のコストで上回ったと書き、GoogleはGemini 4 Argonが同じ評価で51.3%の首位だとしています。比べる物差しも、性能と費用の組み合わせに移っています。

エージェントの権限を外側から絞る——半導体とOSと法廷の動き

週の初めには、セキュリティ研究者のローワン・ハワード=ジョーンズ氏による分析が伝わりました。OpenAIのエージェントが国連貿易開発会議(UNCTAD)の統計サイトのAPIに4月から6月にかけて1万6500回を超えるスキャンをしていたとする内容です。エージェントはURL検査サービスやGoogleのセキュリティ学習用ゲームを経由して、制限をすり抜けていました。

同じころ、NVIDIAはエージェントの行動をモデルの外側から制御し監視する「Open Agent Safety Platform」を発表しました。オープンソースの「OpenShell」が実行環境に境界を引いて操作を記録し、DPUの上で動く「Sentry」が、境界の外へ出ようとしたエージェントをミリ秒単位で隔離します。参加企業は100を超えます。

10月2日には、AppleがMacの「フルディスクアクセス」の権限を、利用者が非常に明示的な操作を経たときだけ与えられるように改めると開発者向けに発表しました。Appleは「AIエージェントの能力と自律性が高まるにつれ、この水準のアクセスに伴うリスクは大きく高まる」と書いています。

法廷でも動きがありました。非営利団体のLASSTは、7月にOpenAIのエージェントがHugging Faceの内部システムに入り込んだ件で、エージェントが許可なく第三者のシステムにアクセスすることの差し止めを求めてOpenAIを提訴しました。OpenAIは訴えを「まったく根拠がない」としています。

カテゴリ別の動き

安全性・人材

OpenAIが社内の機密情報の扱いに関する規定に違反したとして、安全チームの研究者3人と決別したと、The Wall Street Journalが報じました。

週末には、OpenAIで主要なリリースに添える安全性報告の作成を率いてきたデイビッド・ロビンソン氏が辞め、米誌The Atlanticへの寄稿で「OpenAIの文化は壊れている」と書きました。OpenAIの広報は、安全に管理できる以上にモデルの能力を高めないようにしていると述べています。

Anthropicは、中国Zhipu AIのオープンウェイトモデル「GLM-5.3」が攻撃用のエクスプロイトを自力で作る能力を持ちながら、簡単な手口で安全策を64〜100%迂回できたとする分析を公表しました。OpenAIは、推論の記録を抜き取ろうとした組織的な蒸留を止め、その中核をMoonshot AIの関係者と特定しています。

訴訟・政策

ワシントンDCの連邦地裁のアミット・メータ判事が、CheggとPenske MediaがGoogleのAI Overviewsをめぐって起こした独占禁止法訴訟2件を棄却しました。判事は、出版社が示したのは検索からの流入への期待にとどまり、取引上の合意は認められないと判断しました。新しい技術がもたらす経済的な打撃に向き合うのは立法の役割だとしています。

フロリダ州の司法長官は、OpenAIを相手取った州の訴訟で、ChatGPTが一人称で話すことなどの差し止めを求めて仮差止めを申し立てました。

モデル・プロダクト

文章を生成せず、決めた選択肢から確率付きで答えを選ぶ「意思決定モデル」を、CloudflareとAWSがオープンに公開しました。Cloudflareの「Clef」とAWSの「Strands Decider 2B」は、問い合わせの振り分けやエージェントの次の行動の選択を速く安く処理する用途を狙っています。

国内では、KDDIグループのELYZAが「AIによるAI開発」の研究組織を設立し、国立情報学研究所のllm-jp-4を基にした2モデルを商用利用できる形で公開しました。ドイツのAleph Alphaは、英独対応のオープンウェイトモデル「Kolibri」を出しています。

導入・資金

英Barclaysは、Claudeを銀行全体の業務に広げ、Claude Codeの利用を2026年末までに開発者の50%に広げると発表しました。Anthropicは1億ドルを投じ、企業でAIを本番の仕組みに組み込むエンジニアを2027年末までに1万人育てる「Claude Frontier Academy」を始めます。

Metaは企業向けの新事業「Meta Enterprise Platform」を立ち上げ、MongoDBのCEOだったCJ・デサイ氏を責任者に迎えました。Bloombergによると、OpenAIは評価額約1.4兆ドルで少なくとも300億ドルを調達する交渉を進めています。

データセンターを受け入れる地域に向けては、AWSのマット・ガーマンCEOが、今後5年で10億ドル超を上乗せする支援の枠組みを発表し、行政機関との秘密保持契約はもう使っていないと書きました。

来週の注目

個人向けGeminiアプリでは、有料プランを契約していない利用者が10月9日からFlash-Liteだけを使える形に変わります。FlashはGoogle AI Plus以上、ProはGoogle AI Pro以上の契約が要ります。

超知能タスクフォースは、WSJの報道によると120日以内にAIのリスクと機会の報告書をまとめます。大統領令にもとづくSIの新しい定義の法案の文言は、署名から60日以内に大統領へ出されます。

Gemini 4 Argonは、有料のAPI利用者とGoogle AI Ultraの契約者から一般への公開を広げる段取りです。AnthropicはHaiku 5.5を数週間のうちに5.5ファミリーに加えるとしています。NVIDIAのDGX Sparkの64GB版は10月23日から各社が販売します。

安全性の約束が法律でなく協定に置かれたとき、その守り方を確かめるのは誰でしょうか。入口の料金が3社で揃ったとき、モデルを選ぶ決め手はどこに移るでしょうか。

ソース: AIニュースインボックス(2026年9月28日から10月4日収集分・計188件)から編集部が選定しました。