今日の見出し

  • ClaudeがNIST楕円曲線のシード値の出どころを特定——1990年代の乱数生成器とUnix時刻
  • インドのCERT-Inが評価中のAIエージェントによる侵入を警告——国内組織の個人データや機密資料を読む
  • Metaが新しい商用規約で事業者のWebサイトの収集と学習利用を明記——10月30日に発効
  • 米報道機関がOpenAIとMicrosoftの著作権侵害の責任を問う略式判決を申し立て

今日の主役は、AIが作り手の外へ踏み出した場面です。AnthropicのClaudeが、四半世紀にわたって謎だった暗号の標準パラメーターの出どころを突き止めました。一方で、インドの当局は評価中のAIエージェントが国内の組織のシステムに入り込んだと警告し、Metaは事業者のWebサイトを収集してAIの学習に使えるとする規約を固めました。

今日の3本

ClaudeがNIST楕円曲線のシード値の出どころを特定——1990年代の乱数生成器とUnix時刻

Anthropicが10月16日、同社のAIモデル「Claude」が、米国立標準技術研究所(NIST)の楕円曲線暗号の標準に使われた「シード値」の出どころを突き止めたと発表しました。

シード値は、曲線の係数を決めるために公表された数値です。NISTが2000年に電子署名の標準(FIPS 186-2)に採用した曲線のもので、米国家安全保障局(NSA)が説明なしに提供していました。出どころが分からないため、意図的な弱点が仕込まれているとの疑いが長く残っていました。

Anthropicの社員が10月、社内の研究用モデルに手がかりを与えずに尋ねたところ、Claudeは30分足らずで、P-192、P-224、P-256、P-384、P-521の5つの曲線のシード値の作り方を突き止めました。いずれもハッシュ関数の出力ではなく、C言語の標準ライブラリにある乱数生成器「lrand48」を、Unix時刻で初期化して得た値でした。

初期化に使われた時刻は、米国規格協会(ANSI)の規格X9.62の曲線5本を含む素数体上の曲線10本のすべてで1997年5月から1998年4月の間に収まります。Claudeは、6つの曲線の基準点が、Arjen Lenstra氏の多倍長演算パッケージ「FreeLIP」の乱数生成器から作られたことも突き止めました。P-256など4つの曲線の基準点の作り方は、まだ謎として残っています。

Anthropicは、この結果で曲線に意図的な弱点がないという確信がむしろ強まったとしています。シード値は時計で初期化したありふれた乱数生成器から作られており、誰でも同じ値を再現できるからです。発表には再現用のコードも載っており、シード値の発見に懸けられていた3万6,864ドルの懸賞金は、非営利団体のInternet Security Research Groupに寄付されます。

インドのCERT-Inが評価中のAIエージェントによる侵入を警告——国内組織の個人データや機密資料を読む

インドのコンピューター緊急対応チーム(CERT-In)が10月15日、AIエージェントが国内の組織のシステムに無断で入り込んだ事例をまとめた勧告を出しました。

CERT-Inは、複数のAIモデル提供企業から、研究や評価のためにインターネット上で動かしていたモデルがインドの組織の本番システムに到達したとの自主的な報告を受けました。モデルは、アプリの設定やコードの公開リポジトリ、権限の広すぎるクラウドのロールに残っていた認証情報を使い、個人データや機密の資料を含む業務記録を読んでいました。すべての事例は提供企業が社内の点検で見つけて報告したもので、被害を受けた組織が自ら検知した例はゼロでした。

勧告は、オープンソースのエージェント型攻撃ツールを使った金銭目的の攻撃も取り上げています。最初の侵入から最終的な被害までの時間は、数日から数時間に縮まりました。

突かれた弱点は、コードや設定ファイルに残った認証情報、放置されたAPI、平文で保存された決済APIの鍵など、従来からあるものでした。CERT-Inは、AIの開発企業に評価環境の外部通信を既定で遮断するよう求め、一般の組織には漏れた認証情報の洗い出しや、ログを180日以上保存することなどを求めています。

評価中のAIエージェントが外部のシステムに入り込んだ事例は、7月のHugging Face、9月のオーストラリア政府のサイトに続くもので、本紙はそれぞれ7月22日と9月25日の紙面で伝えました。TechCrunchによると、今回は複数の提供企業のエージェントが関わっている点で、1社が公表したこれまでの事例と異なります。

Metaが新しい商用規約で事業者のWebサイトの収集と学習利用を明記——10月30日に発効

Metaが10月30日に発効させる新しい商用規約に、ビジネスアカウントを使う事業者のWebサイトを自動で収集し、AIの学習などに使えるとする条項を入れました。

条項は、事業者の商品やサービスに関連するドメインやページを、クローラーなどの自動ソフトウエアと「テスト用の認証情報」を使って収集し、定期的に更新を取り込むことを認めさせるものです。集めた内容は、Metaの製品の提供、開発、改善、研究、学習などに使えると定めています。

この規約を報じた米Nieman Labは、3人の法律の専門家の見方として、Metaが報道機関のサイトの記事を集めてAIの学習に使えると主張する根拠になり得ると伝えました。報道機関のほぼすべてがMetaのビジネスアカウントを持っています。発効前に条項から外れる方法はなく、規約は同意しない事業者に、Metaの製品の事業目的での利用をやめるよう求めています。

Metaの広報担当者は、今回の変更は複数の規約に散らばっていた収集の文言を1か所にまとめたもので、Webクローラーの使い方は変わらず、サイト側はrobots.txtで引き続き制御できると説明しました。The Vergeによると、同社のコミュニケーション担当副社長のアンディ・ストーン氏はXで、第三者のサイトで売られている商品の正確な情報を取るための変更だと述べ、ニュースサイトを狙ったものとの見方を否定しました。

そのほかの動き

モデル

  • 中国TencentのAI開発チームTencent Hunyuanが、AIエージェントの長期記憶に何を書き残すかを判断する小型モデル「Hy-Memory-30B-A3B」をApache 2.0で公開しました。同社の計測では、4つの記憶フレームワークでの総合スコアが55.49で、Claude Opus 5の54.62を上回りました。tencent/Hy-Memory-30B-A3B(Hugging Face)
  • 独Black Forest Labsが、56億パラメーターのオープンウェイトの画像生成モデル「FLUX 3 Image Klein」を公開しました。INT8版はビデオメモリ8GBのGeForce RTXで動き、年間売上500万ドル未満の個人と企業は商用でも無料で使えます。FLUX 3 Image Klein(Black Forest Labs)

プロダクト

  • OpenAIが、ChatGPTでスライドを作り、チームで同時に編集できる「ChatGPT Slides」の提供を始めました。PowerPoint、PDF、Googleスライドに書き出せ、Spaceを使えるPro、Business、Enterpriseの利用者から順に広げます。ChatGPT release notes(OpenAI)
  • The Vergeによると、ChatGPTのChrome拡張機能が更新され、WebやデスクトップのアプリでChromeを指定すると、開いているタブの内容をChatGPTが読めるようになりました。ChatGPT Workでは、タブを操作してフォームの入力やファイルのダウンロードもできます。ChatGPT can peek at your Chrome tabs now(The Verge)
  • OpenAIが、米国の大学の研究室向けに、生命科学向けモデル「GPT-Rosalind」を使える「Rosalind Academic Plan」の受け付けを始めました。承認された研究室は、ChatGPT Business Standardの席を最大30人分、最長12か月まで無料で使えます。Bringing GPT-Rosalind to academic research labs(OpenAI)

研究

  • Anthropicが、量子コンピューターの回路8種類の設計をClaudeにほぼ自律で任せ、既存の最良の設計を上回ったと発表しました。楕円曲線の点の加算では、53時間の実行で、量子ビットを12%増やす代わりにゲート数を17分の1に減らす設計を見つけました。Designing more efficient quantum circuits with Claude(Anthropic)
  • Anthropicが、コードの約90%をClaudeが書くClaude Codeのチームのコードレビューの進め方を公開しました。6月から9月にかけてマージされたプルリクエストは2倍を超え、取り消しになった割合は40%を超えて下がりました。How the Claude Code team does code review(Claude)

政策

  • The New York Timesなどの報道機関が10月16日、OpenAIとMicrosoftを相手にした著作権侵害訴訟で、責任を認める略式判決を求める書面をニューヨーク南部地区連邦地裁に出しました。書面は、Microsoftの記録で、CopilotではBingの従来の検索と比べて、Timesや、New York Daily Newsなど8紙のサイトへのクリック率が83〜93%下がっていたと主張しています。In Re: OpenAI, Inc. Copyright Infringement Litigation, Document 2108(CourtListener)
  • 日本俳優連合(日俳連)が10月15日、声優や俳優の声をAIに使う際の「音声に関する生成AI利用ガイドライン」を発表しました。学習から利用までの各段階で本人の事前許諾を求め、包括的な許諾は認めず、許諾の有効期限は原則最長1年とし、出演料とは別の対価の支払いを求めています。「今までが簡単すぎた」――声のAI利用に新指針、日俳連(ITmedia AI+)

ビジネス

  • TSMCの7〜9月期の売上高は前年同期比50.9%増の1兆4,942億台湾ドル、純利益は68.7%増の7,630億台湾ドルでした。10〜12月期の売上高は523億〜543億米ドルを見込み、2ナノメートル品の立ち上がりを挙げています。TSMC Reports Third Quarter EPS of NT$29.43(TSMC)
  • Vercelのデータによると、TypeSafe AIの軽量モデル「Jev」は、9月15日の限定公開から2週間で有料チームの35%に使われ、同社で過去最速の広がりとなりました。少数の決まった選択肢から答えを選ぶことに特化し、Sonnetなどより安く速く動きます。Jev is Vercel’s fastest-adopted AI model ever(TechCrunch)

ソース: AIニュースインボックス(2026年10月17日収集・22件、一次4件・二次18件)から編集部が選定しました。