今日の見出し

  • OpenAIが「GPT-5.6」を一般提供開始——Sol・Terra・Lunaの3層構成、複数エージェントを並列稼働させる「ultra」も導入
  • 自律エージェント「ChatGPT Work」登場——Codex統合で数時間級の業務を分解実行、デスクトップ版は無料プラン含む全プランへ
  • NYTなど報道各社、OpenAIの「ログ検索能力の偽装」と証拠隠しを追及——制裁動議を提出
  • GPT-5.6はMicrosoft 365 Copilotの標準採用モデルにも

きょうはOpenAIが主役の一日です。

製品面では、新モデル「GPT-5.6」と自律エージェント「ChatGPT Work」を同時に投入し、性能・コスト効率・業務エージェントの三方向で攻勢をかけました。しかし同じ日に、ニューヨーク・タイムズ(NYT)などとの著作権訴訟では、証拠開示をめぐる深刻な申し立てが飛び出しています。作る側の勢いと、問われる側の重みが、一社に同時に集まった一日でした。

今日の3本

OpenAI「GPT-5.6」一般提供開始——3層構成と並列エージェントの「ultra」

OpenAIが新モデル群「GPT-5.6」の一般提供を開始しました。

GPT-5.6は、フラッグシップの「Sol」、日常業務向けのバランス型「Terra」、最も低コストな「Luna」の3層で構成されます。数字の「5.6」が世代を示し、Sol・Terra・Lunaはそれぞれ独自のペースで更新される能力ティアという整理です。あわせて、最高性能の設定として「ultra」を導入しました。既定で4つのエージェントを並列稼働させ、要求の重いタスクをより速く仕上げる仕組みです。

性能面でOpenAIが押し出すのは、トークンあたりの効率です。同社の公表値では、55分野の長時間プロフェッショナル業務を測る「Agents' Last Exam」でSolが53.6と過去最高を記録し、Anthropicの「Claude Fable 5」(適応推論)を13.1ポイント上回ったとしています。下位のTerraとLunaも、推定で約16分の1のコストでFable 5を上回ると主張します。ただし、これらはOpenAI自身の公表値であり、コストは同社のシミュレーションに基づく推定です。ベンチマークごとに勝敗が分かれる項目もあり、額面どおりの序列としては読めません。

API価格は100万トークンあたり、Solが入力5ドル・出力30ドル、Terraが入力2.50ドル・出力15ドル、Lunaが入力1ドル・出力6ドルです。本日からChatGPT・Codex・OpenAI APIで提供が始まり、24時間かけて全世界に展開されます。

安全面では、サイバー関連の防護を従来モデル比で約10倍に強化したと説明しています。最も高度なサイバー能力を使い続けるには、9月1日までにハードウェアパスキーによる「Advanced Account Security」の有効化が必要になります。今回の一般提供は限定プレビューを経たもので、The Vergeはこのプレビューが政府の承認を伴うものだったと伝えています。一方TechCrunchは、その審査のテスト方法や実施主体が公開されておらず、プロセスが不透明だと指摘しています。

自律エージェント「ChatGPT Work」登場——Codex統合で数時間級の業務を遂行

OpenAIは同じ日に、アプリやファイルを横断して自律的に作業を進める新エージェント「ChatGPT Work」を発表しました。

ChatGPT Workは、与えられた目標を小さなステップに分解し、数時間かかる複雑なプロジェクトでも独立して進めます。SlackやMicrosoft Teams、Google Driveなど接続したアプリから情報を集め、表計算・スライド・文書・ウェブアプリといった完成物に仕上げる設計です。定型作業を予約実行する「Scheduled Tasks」や、デスクトップ上でアプリやブラウザを直接操作する「Computer Use」も備えます。

土台になっているのは、コーディングエージェントとして始まったCodexの技術です。OpenAIによると、Codexは週に500万人超が利用し、うち100万人超はソフトウェア開発以外の業務に使っています。今回、Codexアプリは新しいChatGPTデスクトップアプリに統合され、既存のデスクトップアプリは「ChatGPT Classic」に改称されます。

作った成果をURLで共有できるウェブアプリ作成機能「Sites」も、パブリックベータとして加わりました。

展開は、ウェブとモバイルでPro・Enterprise・Edu向けに本日から始まり、Plus・Businessにも数日以内に広がります。新しいデスクトップアプリ(Mac・Windows)では、無料プランを含む全プランでChat・Work・Codexを使えます。安全面についてOpenAIは、重要な操作を上位モデルが事前確認する「自動レビュー」がレッドチーム演習で機密データ抽出の試みを100%ブロックした、と説明しています。

The Vergeは、ChatGPT WorkをAnthropicの「Claude Cowork」への対抗と位置づけています。文書や資料の作成を担う自律エージェントは、汎用チャットの次の主戦場になりつつあります。

NYTなど報道各社、OpenAIの証拠隠しを追及——制裁動議を提出

NYTを筆頭とする報道各社は7月9日、著作権訴訟でOpenAIが証拠を隠したとして、制裁を求める動議を裁判所に提出しました。

動議によると、OpenAIは2年にわたり、ChatGPTの大規模なログ検索は技術的に困難で負担が大きいと裁判所に説明してきました。しかし4月に行われたOpenAIのプライバシー担当エンジニアへの再尋問で、同社が訴訟開始前から、匿名化済みの7800万件と1000万件のログサンプルを保有し、著作権コンテンツの再現(regurgitation)を遮断するフィルター研究のために検索まで済ませていたことが明らかになった、と原告側は主張しています。

原告側は、この間の開示手続の負担も訴えています。報道各社は8カ月をかけて、当初求めた1億2000万件を大きく下回る2000万件のサンプルしか閲覧できませんでした。しかもOpenAIがAIで190億件もの黒塗りを施したため、裁判所はこのサンプルを「使用不能」と判断しています。さらに原告側は、保全命令に反して数十億件のログが削除・圧縮された疑いも指摘しました。

求めている制裁は踏み込んだ内容です。2000万件サンプルの証拠使用の禁止、「原告コンテンツの相当量の再現があった」ことを立証済みの事実として扱うこと、そしてログ削除について陪審に説示することを裁判所に求めています。OpenAIの広報担当者は、動議は利用者のプライバシーを侵害するための試みだと反論し、フェアユースの主張を維持する姿勢を示しました。

生成AIをめぐる著作権訴訟の主戦場が、「学習はフェアユースか」という実体論と並んで、証拠開示(ディスカバリー)手続の攻防に移ってきたことを示す展開です。制裁が認められれば、市場への損害を否定する立証が難しくなり、OpenAIのフェアユース抗弁には大きな打撃となります。

そのほかの動き

モデル

  • OpenAIは、GPT-5.6がMicrosoft 365 Copilotの標準採用モデルになると発表しました。Word・Excel・PowerPoint・Chat・Coworkで使われ、Microsoftは同モデルにOpenAI API経由で直接アクセスします。 - GPT-5.6 is now the preferred model in Microsoft 365 Copilot(OpenAI)
  • OpenAIは、昨年10月に発表したエージェント型ブラウザ「ChatGPT Atlas」を終了すると確認しました。8月9日の廃止を予定し、ブラウザ機能は新しいChatGPTデスクトップアプリとChrome拡張に引き継がれます。 - The ChatGPT browser is already dead(The Verge AI)
  • Metaは、エージェント型コーディングモデル「Muse Spark 1.1」を公開しました。価格は入力100万トークンあたり1.25ドル・出力4.25ドルとロイターは報じており、AnthropicのClaude Haiku 4.5に近い水準です。ザッカーバーグCEOはこの発表を3年ぶりのX投稿で宣伝しました。 - Meta enters the crowded AI coding battle with Muse Spark 1.1(TechCrunch AI)
  • Anthropicは、Claudeの利用パターンを振り返るベータ機能「Reflect」を発表しました。利用の傾向を期間別に可視化し、AIとの付き合い方を利用者自身に見直させる設計です。 - A new way to reflect on how you use Claude(Anthropic)
  • OpenAIは、生物兵器転用を防ぐ脆弱性発見プログラムを常設の「OpenAI Bio Bounty Program」へ移行しました。ユニバーサルジェイルブレイクの報奨金を2万5000ドルから5万ドルへ倍増し、GPT-5.5向けのテストは7月27日で終了して以降はGPT-5.6が対象になります。 - OpenAI Bio Bounty Program(OpenAI)

製品

政策

  • Googleは、検索・YouTube・Discoverの広告に、AIで作成・編集されたかを示す透明性表示を導入しました。「My Ad Center」の「この広告の作成方法」から確認でき、自社の生成AIツールで作った広告は自動表示、他社ツールの場合は広告主の申告に委ねられます。 - Expanding AI transparency in ads(Google Blog)
  • Microsoftは、脆弱性の発見にAIを活用し、Windows 11の月例セキュリティ更新の件数を増やすと発表しました。攻撃側もAIで脆弱性発見を速めるなか、検知は前倒しし、コードレビューは引き続き人間が担う方針です。 - マイクロソフト、AI活用でパッチチューズデイの規模拡大へ(The Verge AI)

ビジネス

その他

  • Anthropicは、AIへの懸念や疑問を公募し、対応を公開追跡する取り組み「Inviting Hard Questions」を始めました。全米5万2000人への調査と、159カ国8万1000人のClaudeユーザーへの聞き取りを土台に、社会的影響を研究する「Anthropic Institute」も新設しています。 - Inviting hard questions(Anthropic)
  • ソフトバンクの全社RAG基盤が紹介されました。約1万9000人の社員が利用しており、データ登録時の承認ワークフローやIdP連携によるアクセス制御で、PoC止まりになりがちなセキュリティとガバナンスの課題を乗り越えた事例です。 - 1万9000人が利用するソフトバンクの「全社RAG基盤」 構築の泥臭い舞台裏(ITmedia AI+)
  • AI検知企業Pangramの調査で、SNSにAI生成コンテンツが広がっている実態が示されました。LinkedInでは長文投稿の40%超が完全なAI生成と判定され、スキャン対象の約3分の1を占めるにすぎない同プラットフォームが、検出されたAIコンテンツ全体の62%を占めました。 - AI Content Is Everywhere on Social Media, Especially LinkedIn(Pangram)
  • 米UCサンディエゴの研究チームが、外科医が遠隔操作する安価な汎用人型ロボットで、生きたブタの胆嚢摘出手術に成功しました。成果はNature誌に掲載され、専用手術ロボットより大幅に低いコストでの遠隔手術に道を開く一方、操作遅延などの課題も残ります。 - Humanoid robots controlled by surgeons did world-first operation on live pigs(Ars Technica AI)

ソース: AIニュースインボックス(2026年7月10日収集・30件、一次8件・二次22件)から編集部が選定しました。