今日の見出し
- アップルがOpenAIを営業秘密の窃取などで提訴——採用面接を通じた機密の聞き出しや持ち出しを主張
- SKハイニックスが米国上場で265億ドルを調達——外国企業による米IPOとして史上最大、米商務長官は米国内新工場の建設を要請
- デジタル庁が国産AI3モデル(tsuzumi 2・Takane 32B・PLaMo 2.0 Prime)を「さくらのクラウド」で稼働へ——ガバメントクラウドでの国産クラウド採用は初
- AnthropicとOpenAIが利用制限の「リセット合戦」——GPT-5.6公開日の応酬
きょうの主役は、モデルの新機能でも性能の数字でもありません。
前日にGPT-5.6の話題で埋まった紙面から一転、動いたのは法廷と資本市場、そして国家のインフラ調達です。アップルはOpenAIを営業秘密の窃取で連邦地裁に訴え、SKハイニックスはAIメモリ需要を追い風に米国市場で史上最大級の資金を集め、日本のデジタル庁は政府AI基盤の足元を国産モデルと国産クラウドの組み合わせに広げると発表しました。AIをめぐる競争が、技術の外側の土俵へ本格的に広がっています。
今日の3本
アップル、OpenAIを営業秘密の窃取で提訴——「採用を通じた組織的な持ち出し」を主張
アップルは7月10日、営業秘密の窃取と契約違反を理由に、OpenAIをカリフォルニア州北部地区連邦地裁に提訴しました。
訴状によれば、アップルは、アップル出身のOpenAI社員による一連の不正行為が、OpenAIの経営幹部の指揮のもとで行われたと主張しています。名指しされた中心人物は、最高ハードウェア責任者のタン・タン氏です。同氏はアップルに24年在籍し、直近はiPhoneとApple Watchの製品デザイン担当バイスプレジデントを務めていました。訴状は、同氏が採用活動でアップルの機密プロジェクトのコードネームを使った、応募者に面接へアップルのハードウェア部品を持ち込むよう求めた、退職予定の社員にセキュリティ手続きの回避方法を助言した、未発表製品の詳細を尋ねた——と主張しています。
もう一人挙げられたのは、アップルに8年在籍したシニアシステム電気エンジニアのチャン・リウ氏です。アップルは、同氏が2026年にOpenAIへ移籍した際に会社支給のノートPCを返却せず、そのPCで技術仕様書やエンジニアリング資料など未発表の技術・製品に関する機密文書をダウンロードしたと主張しています。訴状は、同氏がOpenAIに応募する他のアップル社員に機密情報を共有し、面接前に何を勉強すべきか助言したとも述べています。
アップルは2月にOpenAIへ懸念を伝える書簡を送りましたが、回答はなかったとしています。さらに、OpenAIとそのパートナーがハードウェア開発でアップルの機密情報を使ったとも主張し、例として、アップル独自の金属仕上げ技術が、アップルの許可があるとパートナーに誤信させたうえで使われたと訴えています。請求内容は、営業秘密の使用・開示の差し止め、機密資料の返還、証拠の保全です。
背景には、OpenAIが初のハードウェア製品を開発しているとの観測があります。OpenAIは昨年、アップルの元デザイン責任者ジョニー・アイブ氏のデバイス企業ioを65億ドルで買収しており、訴状にはioも名前が挙がっています(アイブ氏個人は挙がっていません)。なお、これらはいずれも係争中の訴訟におけるアップル側の主張です。TechCrunchはOpenAIにコメントを求めましたが、記事公開時点で回答は掲載されていません。
SKハイニックス、米国上場で265億ドル調達——外国企業による米IPOとして史上最大
韓国の半導体メモリ大手SKハイニックスは7月10日、米国市場への上場で265億ドル(約40兆ウォン)を調達したと発表しました。
同社は米国預託証券(ADR)1億7790万株を1株149ドルで売却しました。外国企業による米国上場として史上最大で、これまで最大だった2014年のアリババ(250億ドル)を上回ります。株式は10日から仮ティッカー「SKHYV」でナスダック取引を開始し、13日(月)から正式ティッカー「SKHY」に切り替わります。初値は公開価格を14%上回り、報道によると応募は募集株数の7倍超に達しました。
需要の源泉は、AI向け半導体の中核部品である高帯域幅メモリ(HBM)です。SKハイニックスはNvidiaの主要サプライヤーの一角を占めており、韓国企業の株価が世界の同業より割安に置かれてきた「コリアディスカウント」を跳ね返す形になりました。同社の届出書類によると、調達資金は韓国国内の新工場、同じく国内のパッケージング施設、次世代チップ製造に必要なEUV露光装置に充てられます。
一方、米国のラトニック商務長官は9日、マイクロンのイベントで、サムスンとSKハイニックスの両社と米国内での新工場建設について協議していると述べたと報じられています。マイクロンは米国内製造に2500億ドルを投資する計画をすでに表明済みです。サムスンとSKハイニックスの2社はつい先日、韓国国内の新たな製造投資に5500億ドル超を約束したばかりで、AIメモリの生産能力をどの国に置くかをめぐる綱引きが続いています。
デジタル庁、国産AI3モデルを「さくらのクラウド」で稼働へ——ガバメントクラウドで国産クラウド初採用
デジタル庁は7月10日、政府職員向けAI基盤「源内」の実証実験の一環として、国産AIモデルを国産クラウド上で稼働させると発表しました。
対象は、NTTの「tsuzumi 2」、富士通の「Takane 32B」、Preferred Networksの「PLaMo 2.0 Prime」の3モデルです。さくらインターネットの「さくらのクラウド」上で稼働させ、源内のチャット機能を通じて政府職員に提供します。従来モデルと今回のモデルの出力をランダムに提示してどちらが好みかを選ばせるテスト方式で、8月までに環境を構築し、9〜11月に複数回のテストを実施する予定です。
源内はデジタル庁が内製したAI基盤で、5月には全府省庁の政府職員約18万人を対象とする実証実験の開始が発表されていました。今回は、政府が利用するクラウドサービス「ガバメントクラウド」として国産クラウドを使う初めての事例になります。
デジタル庁はこの取り組みを、AIに関する日本の自律性の確保につなげたい考えです。モデルもクラウドも国産の組み合わせで政府業務を回せるかを実地に試すもので、海外の基盤モデルと海外クラウドに依存してきた政府AIの構図に、選択肢を一つ加える動きといえます。
そのほかの動き
モデル
- Anthropicは7月9日、Claude全ユーザーの5時間ごとおよび週ごとの利用制限をリセットしました。同日にGPT-5.6を公開したOpenAIの幹部はX上で「I smell fear(ビビってるね)」と挑発し、OpenAI側もCodexと「ChatGPT Work」の利用制限をリセットするなど、応酬に発展しています。 - Claude、利用制限を全リセット 競合「GPT-5.6」公開と同日……OpenAI幹部「ビビってるね」(ITmedia AI+)
- OpenAIは、最上位設定の「GPT-5.6 Sol Ultra」がグラフ理論の未解決問題「サイクル二重被覆予想」の証明を単独で導いたとする論文を公開しました。数十年にわたり未解決とされてきた問題で、主張どおりなら、AIが独自の数学的証明を生み出した事例になります。第三者による検証はこれからです。 - GPT-5.6 Sol Ultra produces proof of the Cycle Double Cover Conjecture(OpenAI・PDF)
- Google AI開発者フォーラムで、Gemini 2.5 Flashの提供終了方針に対し、存続を求める開発者の投稿が相次いでいます。後継モデルは応答が遅く音声エージェント用途に向かない、一部地域では未提供だとする指摘があり、投稿時点でGoogleの公式回答は確認されていません。 - Don't discontinue Gemini 2.5 Flash(Google AI Developers Forum)
- テスラ・ジャパンは7月10日、対話型AI「Grok」を日本のテスト車両で利用可能にしたと発表しました。ナビの目的地設定や車両状態の確認などを車内から音声で操作できる機能で、米国では2025年7月から先行提供されていました。 - テスラ車内で「Grok」と会話、日本でも展開へ ナビ設定やルート確認を音声で(ITmedia AI+)
プロダクト
- ICT総研の調査(2026年2月実施・インターネットユーザー2024人対象)で、生成AIサービスが使えなくなると「非常に困る」「ある程度困る」と答えた人が合わせて59.2%に上りました。生成AIの利用後に利用頻度が最も減った手段は検索エンジン(41.3%)で、SNSや「人に聞く」を上回っています。 - 「生成AIをもう手放せない人」が約6割 逆に“使わなくなったもの”1位は?(@IT)
研究
- Googleは、Geminiアプリに個人向けの学習支援機能「学習ノートブック(study notebooks)」を追加しました。理解度や弱点に合わせて小分けの学習コンテンツと確認クイズを提供し、進捗をダッシュボードで可視化します。 - Here's how to make study notebooks in the Gemini app(Google Blog)
- ボストン拠点のスタートアップAtomscaleが、創業の狙いを説明する文書を公開しました。材料開発の壁は新材料の発見でなく量産プロセスの確立にあるとし、装置ごとに分断された特性評価データを物理法則組み込み型のAIモデル群で統合することで、従来の機械学習比で「43倍多くの有用情報」を抽出できると主張しています。 - Materials innovation has a scale-up problem, not discovery(Atomscale)
ビジネス
- Hugging FaceのCEOクレマン・ドゥランゲ氏は、TechCrunchのポッドキャストで、「AI版GitHub」と評される同社のプラットフォームがフォーチュン500企業の約半数に使われていると述べました。企業は高価なフロンティアAPIから使い始め、規模の拡大とともにオープンソースモデルへ移行する傾向があると指摘しています。 - Hugging Face's CEO on why companies are done renting their AI(TechCrunch AI)
- 米太陽光・蓄電大手サンランは、自社の太陽光パネルと蓄電システムを導入済みの家庭に小型のAI計算ノードを設置し、参加者に報酬を支払うパイロットプログラムを始めました。集めた分散計算能力は企業向けAI利用者に販売する計画で、データセンター建設への地域の反発が強まるなかの新しい手法です。 - Would you host part of an AI data center in your home?(The Verge AI)
その他
- 欧州委員会は、FacebookとInstagramの自動再生・無限スクロール・パーソナライズ推薦機能が依存性を持つとの予備的見解を示し、Metaに既定での無効化などの設計変更を促しました。デジタルサービス法(DSA)違反が最終認定されれば、制裁金は世界年間売上高の最大6%に達するおそれがあります。Metaは、十代向けの保護策を講じてきたとして見解に異議を唱えています。 - Disable autoplay and infinite scroll or risk massive fines, EU tells Meta(Ars Technica)
- 英ケンブリッジ大学の研究プログラム(CASP)が、テロ組織ボコ・ハラムの元メンバーへの聞き取りに基づく報告書を公表しました。攻撃計画や兵器の不具合対応、爆発物の設計に複数のフロンティアAIが使われ、専門部隊と内部訓練を通じて利用が組織内に制度化されていると報告しています。 - How the terrorist group Boko Haram uses frontier AI(CASP)
- Instagramを率いるアダム・モセリ氏はポッドキャストで、コンテンツがAI生成かどうかの開示は必要だとしつつ、プラットフォーム側でAIコンテンツを一律に排除する考えはないと述べました。AIが好みでない利用者は自分のフィードから外せばよいという立場で、当面はラベル表示による識別方針を維持します。 - Instagram's Adam Mosseri: If you don't like AI, 'then you shouldn't have it in your feed'(The Verge AI)
ソース: AIニュースインボックス(2026年7月11日収集・27件、一次2件・二次25件)から編集部が選定しました。