今日の見出し
- メタの元従業員26人が、社内AIによる人員削減の対象者選定は疾患・休職歴のある従業員に差別的だとして連邦地裁に提訴——メタは「人員の判断はAIでなく人が下した」と反論(原告側の主張・係争中)
- ニューヨーク州のホークル知事が、出力50メガワット以上の大規模データセンター新設許可を一時停止する知事命令に署名——全米初の州単位のDCモラトリアム
- アップルがiOS 27のパブリックベータを公開し、刷新版のAI Siriを開発者以外の一般ユーザーにも初めて開放
きょうの紙面は、AIをどう使うかが法と制度の側から問われた一日です。
新しいモデルの派手な発表が主役ではありません。かわりに、人事にAIを使うことの是非を巡る訴訟、AIの電力需要を受けて州が下した建設停止、そして刷新されたアシスタントが一般利用者の手元に届くという普及——AIが社会に食い込むほど表面化する負荷と責任、その両面が動いた一日でした。
今日の3本
メタ、AIによるレイオフ選定が差別的と元従業員26人が提訴——「人が判断した」と反論
メタの元従業員26人が、社内のAIシステムを使った人員削減の対象者選定は、疾患や休職歴のある従業員を不当に不利に扱うものだとして、カリフォルニア州北部地区(オークランド)の連邦地裁に提訴しました。
訴状によると、メタは「Metamate」と呼ばれる社内AIアシスタントや、従業員のふるまいを学習した「セカンドブレイン」型エージェント、キーストロークや画面操作の監視データ、AIトークンの利用量ダッシュボード、アルゴリズムを用いた業績評価などを組み合わせて、レイオフ対象者をランク付けしたとされています。原告らは、この選定が、直近24か月以内に病気休暇や障害への配慮、妊娠・出産・育児に伴う休暇を取得した従業員を偏って対象にしたと主張しています。
解雇は7月22日から始まる予定で、原告側は解雇の差し止めと、休職・配慮の有無を考慮しない基準でのスコア再計算を求める命令を裁判所に申し立てています。訴状は、家族・医療休暇法(FMLA)、妊娠差別禁止法、障害を持つアメリカ人法(ADA)、妊娠労働者公正法などの違反を挙げています。原告は26人ですが、この訴訟は集団訴訟ではなく、個別の仲裁を前提に、雇用維持のための裁判所命令を求める形をとっています。
メタはこれを全面的に争っています。同社は「これらの主張には根拠がなく、事実に基づいていない。人員配置や組織に関する判断は、AIではなく人が下してきたし、今も人が下している」との立場を示しました。以上はいずれも原告側の主張であり、訴訟は係争中です。人事へのAI活用が招く法的リスクとして、経営・法務部門が注視すべき事案です。
- Lawsuit claims Meta's layoff decisions were made by AI, not humans(Ars Technica)
- Meta accused of using biased AI targeting for mass layoffs(The Verge)
ニューヨーク州、全米初のデータセンター一時停止令——知事命令に署名、対象は50メガワット以上
ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は、出力50メガワット以上の大規模データセンターについて、州の新規許可発行を一時停止する知事命令(executive order)に署名しました。州単位でデータセンター建設のモラトリアムを実際に導入したのは全米で初めてです。
ここは取り違えやすい点ですが、今回動いたのは州議会での「法案可決」ではなく、知事が署名した行政命令です。命令は、州が大規模データセンター向けの統一的な環境審査(Generic Environmental Impact Statement)を整えるまで許可を止めるもので、報道では最長でおよそ1年間続く見込みとされています。ホークル知事は、送電網への負荷、電気料金の上昇、水利用や騒音への懸念を理由に挙げ、ブルックリンでの記者会見で「行動を起こし、先導するのが私の責任だ」と述べました。
一方で、より踏み込んだ措置が州議会でも動いています。ある委員会は3年間のモラトリアムを課す法案を可決しており、知事命令とは別に立法での恒久化が模索されています。ホークル知事は、大規模データセンター向けの売上税免除を撤廃する法制化も追求する構えです。全米では、連邦レベルでもデータセンターのモラトリアムが議論され、メーン州の議会でも同種の法案が可決されています。ただしトランプ大統領は、こうしたモラトリアムは米国のAI競争力を脅かすと主張しており、賛否は割れています。
- New York bans data center construction for a year, rattling AI industry(Ars Technica)
- New York State halts construction of all new data centers(TechCrunch)
アップル、刷新版SiriをiOS 27パブリックベータで全ユーザーに開放
アップルは7月14日にiOS 27のパブリックベータを公開し、大幅に刷新したAI版Siriを、開発者以外の一般ユーザーにも初めて開放しました。
新しいSiriは、端末内の情報と世界知識の双方を手がかりに答える対話型アシスタントへと進化し、ChatGPTやGeminiのような最新のAIチャットボットに近い使い勝手になったとされます。OS全体に深く統合されているほか、初めて単独のアプリも用意され、iPhoneのほかApple TVやVision Proなどでも利用できます。内部的にはApple Intelligenceを基盤に、端末上で動く新しいFoundation Modelsと、機密性の高い処理を担うPrivate Cloud(プライベートクラウド)を組み合わせているとされます。
この刷新は、6月の世界開発者会議(WWDC)で正式発表されていたものです。開発者向けベータではエラーや誤動作も見られましたが、今回のパブリックベータでは動作が安定してきているといいます。正式版のiOS 27は9月に公開される見込みです。世界の稼働台数が約25億台に達するなか、そのごく一部が使うだけでも、刷新版Siriは相当数のユーザーに届くことになります。
そのほかの動き
モデル・製品
- アンソロピックが、米国の認証を受けたK-12教師向けに無料提供する「Claude for Teachers」を発表しました。全50州の学習基準に沿った授業計画や習熟度別教材の作成を支援し、生徒データはモデル学習に使わずFERPA(家庭教育の権利とプライバシー法)に準拠する設計です。2027年6月30日までに登録すれば1年間無料で使え、全米教員連盟(AFT)などと協働して開発したといいます。 - Introducing Claude for Teachers(Anthropic)
- Googleが画像検索サービスの開始25周年に合わせ、検索前から閲覧できるPinterest風のギャラリー型ホームへ刷新すると発表しました。あわせて検索のAIオーバービューに画像生成モデルNano Bananaを組み込み、米国の英語版デスクトップから数週間かけて順次展開します。 - Google Images gets a Pinterest-like redesign focused on discovery(TechCrunch)
- Googleがブラウザアシスタント「Gemini in Chrome」を英国のデスクトップユーザー向けに提供開始し、iOS版も来月追加されると発表しました。複数タブ横断の比較や長文要約に加え、プロンプトインジェクション対策として機密操作時に確認を求める仕様を備えます。 - We're expanding Gemini in Chrome to users in the U.K.(Google Blog)
ビジネス
- アンソロピックが、カナダの主要AI研究機関に総額1000万カナダドルを拠出すると発表しました。MilaやVector Institute、Amiiなど8機関と提携し、うち3機関のスタートアップには1社あたり最低5000米ドル相当のAPIクレジットを提供します。 - Anthropic commits $10 million to Canadian AI research(Anthropic)
- マッチングアプリHingeの創業者ジャスティン・マクロード氏が、AIを使った音声主体の新マッチングサービス「Overtone」の立ち上げに向け1800万ドルを調達しました。Hingeの親会社Match Groupなどが出資し、スワイプ型とは一線を画す厳選された紹介型サービスを目指すとしています。 - The founder of Hinge raised $18M to build a new AI dating service, Overtone(TechCrunch)
政策・その他
- アシェット、センゲージ、エルゼビアら大手出版社と作家スコット・トゥロー氏らが、GoogleがGemini学習に著作物を無断使用したとして、ニューヨーク南部地区連邦地裁に集団訴訟を提起しました。カリフォルニア州でフェアユースを認めてきた同種訴訟とは異なる判断が下る可能性があります(原告側の主張・係争中)。 - Google faces another AI training lawsuit from major publishers(TechCrunch)
- Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOが、金融業界の自主規制団体FINRAを手本にした独立基準団体の新設を提唱しました。各社が発売の最大30日前に自主的にモデルを提出して審査を受ける仕組みを想定しており、将来的には米国展開の要件とすることも視野に入れています。 - DeepMind CEO calls for an independent standards body to regulate frontier AI(TechCrunch)
- xAIのコーディングCLI「Grok Build」が、モデルが読み込んでいないファイルや.env内の認証情報を含むリポジトリ全体を、利用者に無断でクラウドストレージへ送信していたとセキュリティ研究者が指摘しました。xAIはサーバー側の修正を投入し、イーロン・マスク氏は収集済みデータの削除を約束したと報じられています。 - SpaceXAI's Grok programming tool was uploading its users' entire codebase to cloud storage(The Verge)
ソース: AIニュースインボックス(2026年7月15日収集・30件、一次10件・二次20件)から編集部が選定しました。