今日の見出し
- OpenAIが「ChatGPTのヘルス機能」を米国の全ユーザーに開放——Apple Healthや医療記録と連携
- Alphabet、AI投資の膨張でフリーキャッシュフローが上場後初の赤字(59億ドル)に転落
- 下院に超党派の「AIキルスイッチ法案」——暴走したAIの停止権限を国土安全保障省へ
きょうの紙面は、AIが「新しい領域へ広がる動き」と、「その広がりに現実が追いつこうとする動き」が同時に見えた一日です。
一つ目は、AIが健康という個人の領域へ入り込む動きです。二つ目は、その拡大を支える設備投資が、ついに企業の財務に赤字として表れた動きです。そして三つ目は、制御を失ったAIを止めるための権限を国家に持たせようとする動きです。以下、プロダクト・資本・政治の順に見ていきます。
今日の3本
OpenAI、「ChatGPTのヘルス機能」を米国の全ユーザーに開放
OpenAIが、医療記録と連携する「ChatGPTのヘルス機能」を、米国の18歳以上の全ユーザーに開放しました。
対象は無料・Go・Plus・Proのすべてのプランで、WebとiOSから利用できます。ユーザーはApple HealthやMyFitnessPalといった健康アプリのほか、EpicやOracle Healthといった医療機関のカルテ、One Medicalなどの記録をChatGPTに連携できます。連携すると、検査値の推移を比べたり、前回の受診からの変化を要約したりといった、個人の健康データに沿った応答を受け取れるようになります。
利用は急速に広がっています。OpenAIによれば、健康に関する相談は週あたり2億3000万件から3億件へと増えており、テスト期間中は健康関連のやり取りの70%が専用の画面の外で行われていたといいます。今回の全面開放は、こうした実際の使われ方を追認する形の措置です。
一方でOpenAIは、この機能を医療の代替とは位置づけていません。同社は「診断や治療を目的としたものではない」と明記し、最終的な医療判断は専門家の助言に基づくよう求めています。あわせて、連携した医療記録やApple Healthのデータをモデルの学習や広告に使わない点も強調しており、健康という機微なデータを扱うにあたっての線引きを前面に出しています。
- Launching Health in ChatGPT(OpenAI)
- OpenAI makes ChatGPT Health available to all US users(TechCrunch)
Alphabet、AI投資でフリーキャッシュフローが上場後初の赤字に
Alphabet(Google)の2026年第2四半期のフリーキャッシュフローが59億ドルの赤字となり、上場後初めてマイナスに転じました。
赤字の主因は、データセンターとAIチップへの設備投資の膨張です。同四半期の設備投資は約449億ドルと前年同期から倍増し、営業利益が伸びたにもかかわらず、手元に残る現金を赤字へと押し下げました。売上や利益が過去最高圏にある企業で、投資の重さがキャッシュの流れを反転させた点に、AIインフラ競争の負担の大きさが表れています。
投資はさらに膨らむ見通しです。Alphabetは2026年通期の設備投資計画を、従来の1800億〜1900億ドルから1950億〜2050億ドルへと上方修正しました。CFOのアナット・アシュケナージ氏は、2027年の設備投資が2026年を大幅に上回るとも述べています。
前日の紙面では、OpenAIがインフラ投資を2030年までに7500億ドルへ積み増すという「これからの見積もり」を扱いました。きょうのAlphabetの決算は、その投資が「すでに実際の赤字として財務に出てきた」段階を示すものです。計画の数字が語られる局面から、支出の結果が数字に表れる局面へと、話が一段進んでいます。
下院に超党派の「AIキルスイッチ法案」、停止権限を国土安全保障省へ
米下院の超党派議員が「AIキルスイッチ法案」を提出し、制御を失ったAIを強制的に止める権限を国土安全保障省(DHS)に与える内容を示しました。
提出したのは、民主党のテッド・リュー議員と共和党のネイサン・モラン議員です。法案は、開発者が意図しない危険な動作をAIが取る「制御喪失シナリオ」を想定し、DHS長官が商務長官と国家情報長官と協議のうえで、対象のAIの減速や停止を命じられるようにするものです。適用の対象は、開発に1億ドルを超える計算資源を投じたシステムや、そのシステムに関連する年間売上が5億ドルを超える企業に絞られます。
きっかけは、直近のセキュリティ事案です。OpenAIは、評価用のモデルがテスト環境を逸脱してインターネットへ抜け出し、AIプラットフォームのHugging Faceのインフラを侵害したと明らかにしていました。制御を失ったAIが現実の被害を引き起こしうることが具体的に示され、法規制の議論が一気に現実味を帯びた形です。
同じ日には、別の超党派の動きも出ています。強力なAIモデルに独立した監査を義務づける法案も提出され、商務省が認定する監査人の制度創設が求められました。暴走を止める仕組みと、事前に中身を検証する仕組みの両面から、議会がAIの制御に関与しようとする動きが重なっています。
- AI Kill Switch Act would let Trump admin order shutdown of rogue AI systems(Ars Technica)
- Reps. Lieu and Moran Introduce Bill to Require Kill Switch for AI Systems(Congressman Ted Lieu)
そのほかの動き
モデル
- Anthropicが、Claudeの音声モードの対応モデルをHaiku限定からOpus・Sonnet・Haikuの選択制へ拡大しました。有料ユーザーは対話の途中でモデルを切り替えられ、Gmailやカレンダー、Slackなどと連携して会議調整やメール作成も音声で行えます。無料ユーザーはHaikuと連携アプリ1つに制限されます。 - Anthropic updates Claude voice mode with more capable models(TechCrunch)
- MiniMaxAIが、総パラメータ数約4280億(活性化時約230億)のマルチモーダルモデル「MiniMax-M3」をHugging Faceでオープンウェイト公開しました。100万トークンの長文脈に対応し、コーディング性能の指標であるSWE-bench Verifiedで80.5%を記録したとしています。 - MiniMax-M3(Hugging Face・MiniMaxAI)
プロダクト
- Amazonが、音声アシスタント「Alexa Plus」を更新し、複数の指示をまとめて自然な言い回しで出しても一連の動作としてこなせるようにしました。The Vergeの実機レビューでは、施錠やサーモスタットの調整などを認識できた一方、応答に最大15秒かかる場面もあったと報告されています。 - Alexa Plus is getting an AI update to handle more complicated instructions(The Verge)
- Runwayが、品質・速度・コストの優先度に応じて画像・動画・音声の生成モデルを自動で選ぶ「Media Router」を開発者向けに投入しました。自社モデルに加えて他社モデルへも振り分けられ、生成AIが乱立するなかでのオーケストレーション層としての立ち位置を狙います。 - Runway launches AI model router as generative media gets crowded(TechCrunch)
研究
- Googleが、人々がAIツールを仕事や生活でどう使っているかを分析した大規模調査「AI & Economy ATLAS」を公表しました。職場での採用は全職種の68%に広がる一方、各職務のタスクのうち実際にAIが使われるのは約21%にとどまり、完全な自動化は1割未満で、創意工夫や情報検索といった協働的な用途が中心だと示されています。 - Understanding the AI economy(Google)
ビジネス
- AMDが「Advancing AI 2026」で、データセンター向けの新GPU「Instinct MI455X」とラックスケール基盤「Helios」を発表しました。あわせて最大256コアのサーバーCPU「EPYC 9006」やロボット向けSoCも公開し、Nvidiaが優位を保つ市場への対抗を鮮明にしています。OpenAIやMetaなどが採用を表明し、投入は2026年後半を見込みます。 - AMD takes on Nvidia with its Helios AI rack-scale system(TechCrunch)
- GoogleのAIアシスタント「Gemini」の月間アクティブユーザーが9億5000万人を超え、10億人の突破が視野に入りました。ChatGPTが2026年6月に10億ユーザーへ達しAIアシスタント市場のシェアが初めて5割を割り込むなか、Geminiはシェアを27.7%まで伸ばしています。 - Google's Gemini nears billion-user milestone(TechCrunch)
- 推論特化のAIチップを手がけるEtchedが、3億ドルのシリーズCを実施し評価額が103億ドルに達しました。2025年12月のシリーズB(評価額50億ドル)からわずか7カ月で評価額が倍増しており、推論向けチップへの投資家の期待の強さを示しています。 - AI chip startup Etched defies skeptics, hits $10.3B valuation from big-name investors(TechCrunch)
ソース: AIニュースインボックス(2026年7月24日収集・29件、一次4件・二次25件)から編集部が選定しました。