今日の見出し

  • 米ワシントンDC近郊で送電線1本が倒れ、3.1ギガワット分のデータセンターがおよそ30秒で電力網から消えた
  • Anthropicが、Claude Codeのシステムプロンプトを8割超削っても測れるほどの性能低下はなかったと公表
  • リード・ホフマン氏らが4月に立ち上げた新AIラボ「Prentis」、評価額10億ドルで1億ドルの調達を交渉中と報じられる

きょうの紙面は、AIをめぐる三つの前提がそれぞれ別の場所で入れ替わった一日です。

一つ目は、電力があることを当然としてきた前提です。二つ目は、指示は細かく書くほど効くという前提です。三つ目は、モデルは大きいほど強いという前提です。以下、ビジネス・モデル・ビジネスの順に見ていきます。

今日の3本

送電線1本が倒れ、3.1ギガワットのデータセンターが30秒で消えた

米ワシントンDC近郊で送電線が1本倒れ、3.1ギガワット分のデータセンターがおよそ30秒で電力網から姿を消しました。

事故そのものは電圧の乱れを招いただけです。しかしその乱れを受けて、データセンター群は設計どおりに自動でバックアップ電源へ切り替わりました。系統の側から見れば、それは巨大な需要が一斉に消えたことを意味します。

行き場を失った電気は系統に残ります。PJMの電力網には最大で3.49ギガワット分の電気が余り、安定するまでにさらに11分を要しました。消えた需要はその時点のPJM総需要のおよそ3%にあたると、Reutersは伝えています。

影響は事故現場の周辺にとどまりませんでした。Ting Labsが収集したデータによれば、このときの電圧上昇は北部バージニアからシカゴまで、PJM網の広い範囲に及んでいます。2024年には60のデータセンターが同時に離脱して1.5ギガワットが消えた事例がありましたが、今回はその2倍を超える規模です。

規模の拡大は、この先も続く見通しです。Synapse Energy Economicsによれば、データセンターは2024年時点でPJMの負荷の約6%を占めており、2040年には24%に達すると見込まれています。

対策として挙がっているのは、データセンターの側に蓄電池を置き、系統の揺れをその場で吸収させる考え方です。キャンパス全体を無停電電源で支える構想を電力設備企業のON.Energyが示しているほか、テキサス州の系統運用者ERCOTは、データセンターのような大口需要家に対して擾乱をそのまま乗り切ること(ride through)を求める方針を示しています。

Anthropic、「システムプロンプトを8割超削っても性能は落ちなかった」

Anthropicが、Claude Codeのシステムプロンプトを80%以上削っても、社内のコーディング評価では測れるほどの性能低下は生じなかったと公表しました。

対象として名前が挙がっているのは、Claude Opus 5とClaude Fable 5です。同社は、こうした世代のモデルでは、規則を網羅的に書き並べるよりも、モデル自身の判断を信頼して指示を薄くするほうが機能すると説明しています。

具体的な指針も示されました。CLAUDE.mdについては、リポジトリが何のためのものかを手短に述べるにとどめ、トークンの大半はコードベース内の落とし穴に充てるべきだとしています。ファイル構成を見れば分かることは書かず、そこからは読み取れない癖のほうを書く、という配分です。

Skillsについては、必要になったときにモデルが情報へたどり着くための軽い手引きと捉えるよう勧めています。よほど重要な領域を除いて制約を掛けすぎず、長いスキルは複数のファイルに分けて段階的開示(progressive disclosure)を効かせる、という設計です。

指示を書き足す代わりに手を入れるべき場所として、同社はツールの設計を挙げています。ツールやスクリプト、ファイルがどのような引数を取り、それをどれだけ表現力のある形にできるかを考えること。さらに、ツール定義そのものを遅延読み込みにして、エージェントが必要になった時点でToolSearchで探しにいく形も示されています。

ホフマン氏らの新AIラボ「Prentis」、評価額10億ドルで1億ドル調達を交渉中

リード・ホフマン氏らが今年4月に立ち上げたAIラボ「Prentis」が、評価額10億ドルで1億ドルの資金調達を交渉していると報じられました。

CEOはRitankar Das氏で、共同創業者にLinkedIn創業者のReid Hoffman氏とZynga創業者のMark Pincus氏が名を連ねます。調達の条件は、協議の内容を知る2人の人物の話としてTechCrunchが伝えたもので、同社の公表によるものではありません。

同社が狙うのは「コンピュータ使用(computer-use)モデル」です。人がパソコンの画面上で行う操作をモデルにそのまま代行させる方式で、保険金請求の処理や、関税還付の例外処理といったオフィスの定型業務を対象としています。

事業の数字も同じ2人の話として伝えられています。Prentisはすでに複数の顧客と最大5000万ドル相当の契約を結んでおり、顧客には医療のマネジメントサービス会社や製造業などが含まれるとされます。第3四半期までに年率換算7500万ドルという数字も出ていますが、これはPrentisのピッチ資料上、実現した削減額の20%を報酬とする契約に基づく推定の年率換算値であり、会計上の認識売上ではなく成果次第かつ最終締結を前提とする、と同社自身が注記しています。

性能についてはPrentis自身の主張があります。同社は、自社モデル「Hive-32B」がOpenAIのGPT-5.4やAnthropicのClaude Opus 4.6を、WindowsAgentArenaとScreenSpot-v2という2つのコンピュータ使用ベンチマークで上回るとしています。1タスクあたりのコストはフロンティアAPIのおよそ10分の1という主張も添えられており、いずれも第三者の検証を経た数値ではありません。

三つの記事は、それぞれ別の場所で起きた別の話です。共通しているのは、積み増せば強くなるという足し算が効かなくなっている点です。データセンターは建てた分だけ動くのではなく、系統が受け止められる範囲で動きます。プロンプトは書いた分だけ効くのではなく、モデルの判断を妨げない範囲で効きます。モデルは大きい分だけ強いのではなく、用途を絞った小型モデルが上位モデルを上回ると主張される段階に入りました。どれだけ増やすかを競う局面から、どこに置くかを競う局面へ、重心が移りつつあります。

そのほかの動き

モデル

その他

  • 米国の図書館司書たちが、身のまわりの機器に組み込まれたAI機能を無効化する方法を教える「Avoiding AI」講座を各地で開いています。メイン州バンゴー公立図書館では定員30人が埋まって待機列ができ、配信を含めて毎回およそ70人が参加しました。フィラデルフィアの図書館では告知のInstagram投稿が2,000件を超える「いいね」を集めています。主催者は、AIを使うかどうかを自分で選べるようにするデジタルリテラシーの取り組みだと説明しています。 - Librarians are hosting viral 'Avoiding AI' workshops for people who are fed up with Big Tech(TechCrunch)
  • OpenAIが初のハードウェア製品として、ChatGPT向けのカスタマイズ可能なキーパッド「Micro」を230ドルで発売しました。キーボード専業のWork Louderとの共同開発で、上段に6個のエージェントキー、下段に6個のコマンドキーを備え、待機・処理中・完了・エラーの状態を白・青・緑・赤で示します。TechCrunchの評者は、設定を終えれば楽しく使える一方、より安価な自作や既製品と比べて価格に見合うかは疑問が残ると評しています。 - I tried out OpenAI's new AI keypad — which will be fun for some coders and slightly mystifying to everyone else(TechCrunch)
  • ライターのニキル・スレシュ氏が、企業幹部の匿名証言をもとに、社内のAI熱狂が異論を許さない空気を生み経営判断を歪めていると論じました。生産性を「100倍にした」といった誇大な主張に異議を唱えると顧客との関係を損ないかねないため、当事者同士が互いの数字を追認し合う構図があるとしています。Daring FireballのJohn Gruber氏は、生成AIが最初から魔法のような体験を与える一方で経営層の期待は現実から離れており、それが冷めるのはバブルが崩れるときだろうと応じました。 - AI Mania Is Eviscerating Global Decision-Making(Daring Fireball)
  • Mesosphere共同創業者のトビー・クナウプ氏が、オープンウェイトのAIモデルが次のAIエコシステムの共通基盤になりつつあると論じました。自社のApache Mesos/DC/OSがKubernetesに主導権を譲った経験を踏まえ、共通のインターフェースとベンダー中立なガバナンスを備えた基盤に業界の重心が移れば、単独ベンダーの開発速度では追いつけなくなると指摘しています。あわせて、オープンソースと呼ばれるAIモデルの多くは学習データや訓練過程までは公開しておらず、実態はオープンウェイトにとどまると述べています。 - Open-weight AI is having its Kubernetes moment(Tobi Knaup)
  • カナダ・ニューブランズウィック州議会のビル・オリバー議員が、先月の本会議演説で、AIチャットボットが原稿に付けた「箇条書きではなく議会演説らしく整えました」という趣旨の説明文まで読み上げました。動画はRedditやThreadsで広がり、CBCやトロント・スターも取り上げています。 - Canadian legislator reads out apparent LLM response in floor speech(Ars Technica)

ソース: AIニュースインボックス(2026年7月26日収集・11件、一次1件・二次10件)から編集部が選定しました。