今日の見出し
- Moonshot AIが総パラメータ2.8兆の「Kimi K3」をオープンウェイトで公開——公式ブログは「Claude Fable 5とGPT 5.6 Solにはまだ及ばない」と自ら書いている
- NVIDIA主導の「Open Secure AI Alliance」が発足——公式ブログが名を挙げた創設パートナーは37社・団体で、OpenAI・Google・Anthropicの名はない
- Claudeの共有チャットとArtifactsがGoogle検索に露出——Anthropicは「共有した時点で公開している」と説明
きょうの紙面を貫いているのは、「開く」という判断が誰の手にあったのか、という一点です。
Moonshot AIは、2.8兆パラメータぶんの重みを自らの手で公開しました。NVIDIAが束ねた37社・団体は、サイバー防御の土台をオープンな技術の側に置くという路線を選びました。そしてClaudeの利用者は、共有リンクを押した時点で公開を選んでいたことになる、というのがAnthropicの説明です。以下、モデル・政策・プライバシーの順に見ていきます。
今日の3本
Moonshot AI、2.8兆パラメータの「Kimi K3」をオープンウェイトで公開
中国のMoonshot AIが、総パラメータ2.8兆のマルチモーダルモデル「Kimi K3」の重みを、予告どおりHugging Faceで公開しました。
構成はMixture-of-Expertsです。総パラメータ2.8兆に対して1トークンあたりの活性化パラメータは1040億、層数は93、896のエキスパートから16を選択し、これに共有エキスパート2を加えます。コンテキスト長は1,048,576トークンで、テキストと画像を同じモデルで扱います。
配布の形も特徴的です。重みはMXFP4、活性化はMXFP8で、SFT段階以降の量子化認識学習(QAT)を経ています。リポジトリは96分割のsafetensorsで構成され、Hugging FaceのAPIが返すファイルサイズを合計すると1.561TBになります。
ライセンスは「Kimi K3 License」です。誰でも無償で入手し、改変・再配布・販売まで行える許諾を与えたうえで、条件を二つ置いています。第一に、推論や追加学習を第三者に提供する「Model as a Service」事業を営み、関連会社を含む合計収益が連続する12か月間で2000万ドルを超える場合は、商用利用の前にMoonshot AIとの個別契約が必要になります。第二に、月間アクティブユーザーが1億を超えるか月間収益が2000万ドルを超える商用の製品・サービスでは、その画面上に「Kimi K3」を明示することが求められます。組織内での利用や、Moonshot AIの公式製品・認定推論パートナー経由での利用は、いずれの条件からも除かれます。
性能の位置づけについては、公表元自身の言葉があります。総合的な性能は最も強力なプロプライエタリモデルであるClaude Fable 5とGPT 5.6 Solにはまだ及ばないとしたうえで、評価スイート全体ではフロンティア級の性能を示し、テストした他のモデルを一貫して上回った、というのがMoonshot AIの記述です。
同社が公表した比較表の数字も、この自己評価と揃っています。GPQA Diamondは93.5で、Claude Fable 5の92.6を上回り、GPT-5.6 Solの94.1には届きません。Terminal-Bench 2.1は88.3で、同じく88.0と88.8の間に入ります。BrowseCompは91.2で3者の中で最も高く、DeepSWEは67.5と、70.0・73.0の後ろに位置します。いずれもMoonshot AIが自社で測定して並べた値であり、第三者の検証を経たものではありません。公表元の自己申告として受け取るのが、いまの時点での正しい読み方なのです。
- moonshotai/Kimi-K3(Hugging Face)
- Kimi K3: Open Frontier Intelligence(Moonshot AI)
- Fable 5に迫る「Kimi K3」オープンウェイト版が公開。MXFP4形式で1.56TB(PC Watch)
NVIDIA主導の「Open Secure AI Alliance」が発足、創設パートナーは37社・団体
NVIDIAが、AI時代のサイバー防御をオープンなモデルとツールの上に築くための業界連合「Open Secure AI Alliance」の発足を発表しました。
公式ブログが名を挙げた創設パートナーは37社・団体です。NVIDIAのほか、Adobe、Cadence、Capital One、Cisco、Cloudera、Cloudflare、Cognition、CrowdStrike、Databricks、Dell Technologies、DoorDash、Elastic、HPE、Hugging Face、IBM、LangChain、Linux Foundation、Microsoft、NAVER、NetApp、Nous Research、OpenClaw、Palantir、Palo Alto Networks、Red Hat、Reflection AI、Salesforce、SAP、ServiceNow、Siemens、SK Telecom、Snowflake、SpacexAI、Synopsys、Thinking Machines Lab、TrendAIが並びます。
名簿にない企業のほうが話題になりました。OpenAI・Google・Anthropicの名は、NVIDIAの発表本文のどこにも出てきません。名を連ねたのは、クラウド・セキュリティ・企業向けソフトウェア・オープンソース財団・AI研究という五つの領域から集まった顔ぶれなのです。なお、The Vergeはこの連合を27社と報じています。本稿は公式ブログが列挙した37社・団体を採りました。
発足の直接のきっかけも、公式ブログが明かしています。先のHugging Faceのセキュリティ侵害事案では、クローズドなAIツールが攻撃者と防御者を区別できず、不可欠なフォレンジック解析を阻みました。そこでHugging Faceは、オープンウェイトのGLM 5.2を自社のインフラで動かし、1万7000件を超える操作を解析して侵入を封じ込めた、というのがNVIDIAの記述です。
連合の土台には既存の取り組みが置かれます。Linux FoundationのAkritesイニシアチブとOpenSSFのコミュニティ活動を足がかりに、オープンな技術で脆弱性の修正と開示を進める、という組み立てです。
参加各社は持ち寄る資産も示しました。NVIDIAはオープンモデル・重み・データと新しいエージェントハーネス研究を提供し、あわせて新規のオープンソースプロジェクト「NVIDIA Labs Object-Oriented Agent(NOOA)」をGitHubで公開しています。HPEはゼロトラストのID基盤であるSPIFFE/SPIREへの貢献を、Hugging Faceは重みの安全な保存形式であるSafetensorsを挙げました。
NVIDIA自身の立て方は、二者択一を避けるものです。世界にはクローズドなモデルとオープンなモデルの両方が必要であり、そのうえでサイバーセキュリティにとってはオープンなモデルとオープンなハーネスが不可欠なのだ、と同社は書いています。防御側が自分のインフラ上で検査し、改変し、実行できることを、その理由に挙げています。
なお、この連合は7月27日号のトップで扱ったHugging Face侵害事案と同じ流れの上にありますが、事案そのものの続報ではなく、連合の結成という別の出来事です。
- Industry Leaders Unite in Open Secure AI Alliance for AI Safety and Security(NVIDIA Blog)
- Nvidia, Microsoft launch open AI security alliance — without OpenAI, Google, or Anthropic(The Verge)
- NVIDIA、「オープンなAIセキュリティ」掲げる業界連合 Microsoftなど30社超が参加(ITmedia AI+)
Claudeの共有チャットとArtifactsが、Google検索に出ていた
Claudeの共有リンクで公開されたチャットとArtifactsが、Google検索の結果に並んでいたとTechCrunchが報じました。
見つかった中身は生活と業務の記録そのものです。患者の詳細を含む医療記録、患者名の入った臨床試験の文書、子どもの氏名と電話番号を含む文書、社内文書、個人情報を含む従業員評価、コード、業務メモが挙げられています。Anthropicが自社のポリシーで禁じている性的に露骨な内容も混じっていました。
Anthropicの説明は、露出の経路をユーザー側の操作に置くものです。同社はチャットのディレクトリやサイトマップを検索エンジンと共有してはいないとしたうえで、誰かが会話を共有するとき、その人はその内容を公開しているのだ、と述べました。共有リンクが検索結果に現れるのは、フォーラムやソーシャルメディアなど検索エンジンから見える場所にそのリンクが貼られた場合だけである、というのが同社の整理です。
経緯は三日でひととおり動いています。7月26日の土曜にRedditの利用者が最初に指摘し、27日月曜の朝に404 Mediaが報じ、同日午後にTechCrunchが確認した時点では露出は解消されていました。
同じ形の露出は初めてではありません。2025年にも、Googleが約600件の会話をインデックスしたのち削除された事例があります。共有リンクを一度押せば、その先の複製と保存は自分の手を離れるのだ、という点は、企業でClaudeを使う側が確かめておく実務の論点です。
三つの話は、開いた主体も動機もばらばらです。それでも読む側に残る仕事は同じところに落ちます。Moonshot AIが公開したのは重みであって、性能の順位を決める第三者の検証ではありません。NVIDIAが公開したのは連合の名簿であって、そこに名前のない三社の言い分ではありません。Anthropicが公開の主体としたのは利用者であって、既定の挙動そのものではありません。何が開かれ、何が開かれていないのかを、そのつど区切って受け取ることです。
そのほかの動き
モデル
- Microsoftが、サイバーセキュリティに特化した初のモデル「MAI-Cyber-1-Flash」を発表し、100を超えるエージェントで脆弱性を発見・検証・修復する自社システム「MDASH」に組み込みました。同社が示した「CyberGymで96%(Mythos比+12ポイント)」という数字は、MDASHとMAI-Cyber-1-Flashを組み合わせた統合システムの成績であって、モデル単体の値ではありません。同モデルが全体の最大90%のタスクを担い、残る例外的に難しい1割にはGPT-5.4を回す設計で、現行の最良構成(GPT 5.4+5.4 mini+5.3 codex)と比べてコストを50%削減できるとしています。あわせて、MDASH上で監視と修正を継続するエージェント群「Perception」も発表されました。 - MAI-Cyber-1-Flash inside MDASH(Microsoft AI)
政策
- Googleがスクレイピング事業者SerpApiを相手取って起こしたDMCA訴訟について、裁判所がSerpApiの却下申立てを認めました。判断の理由は当事者適格です。Googleは検索結果に含まれる著作物を保有しておらず、権利者を代理して行動していることも示せていない、というのが裁判所の見立てでした。Googleは訴状を修正する方針で、期限は21日間です。Redditが2025年10月にSerpApiとPerplexityを相手取って起こした別訴は係属中で、Googleの提訴は2025年12月でした。SerpApiはArs Technicaに対し、GoogleとRedditは自ら書いたのでも所有するのでもない内容に後から支配権を主張し、DMCAを使って開かれたインターネットを囲い込もうとしている、と述べています。 - “Google and Reddit do not own the Internet," web scraper says after court win(Ars Technica)
研究
- Similarwebの新しいデータによると、GoogleのAI Overviewsが表示される検索の割合は、2025年7月からの1年で15%から43%へ上がりました。AI Mode経由の訪問数は、2025年6月の1億2600万から2026年5月の2億7900万へ増えています。同じ調査では、米国のChatGPTデスクトップからウェブページへの参照が5月7日の更新後に2026年3月の25%から5月30日までに約60%へ伸びた一方、引用を含む問い合わせは全体の6.8%にとどまると報告されました。 - Google's AI search is rapidly becoming the default, new data shows(TechCrunch)
ビジネス
- OpenAI元チーフサイエンティストのIlya Sutskever氏が率いるSafe Superintelligence(SSI)が、NVIDIAと長期の計算資源提携を結びました。出資額はBloombergが50億ドルと報じ、TechCrunchの取材源は「数十億ドル規模」と述べています。評価額はPitchBookのデータとして320億ドル(ポストマネー)が示されました。NVIDIAはVera RubinプラットフォームへのアクセスをSSIに提供し、同社の計算資源は一桁増える見込みです。Sutskever氏は、規模を拡大するに値する研究があり、大きなNVIDIAの計算機を使えればそれができる、と述べています。 - Ilya Sutskever's Safe Superintelligence partners with Nvidia to scale its AI research(TechCrunch)
ソース: AIニュースインボックス(2026年7月28日収集・31件、一次6件・二次25件)から編集部が選定しました。