今日の見出し
- アリババ、2.4兆パラメータの「Qwen3.8-Max」を発表——Max級で初のオープンウェイト公開は来週の予定
- MiniMax、動画モデル「MiniMax-H3」の重みを公開——ライセンスの適用地域からEU・英国・韓国・米国を除外
- メキシコ国立自治大学UNAM、AI監視のリモート入試が破綻し約5万8000人に対面での再試験
- 実在女性の写真を生成AIでわいせつに加工しSNSへ投稿した疑いで、警視庁が会社員の男を逮捕・高校生を書類送検
- EU AI法の表示・透明性義務が適用開始、AIの生成・改変コンテンツに機械可読なラベル
大型モデルの重みをめぐる動きが立て続けに出た一日です。片方は同社のMax級として初めての公開を来週に予告し、もう片方は動画と音声をまとめて生成するモデルの重みを今日公開しました。いずれもダウンロードできる形で世に出ます。
ただし「公開」の中身は一様ではありません。片方はまだ公開の予告の段階にあり、もう片方は公開済みである代わりに、使ってよい地域が契約で区切られています。手に入るかどうかと、使ってよいかどうかは、別々に決まっています。
三本目はモデルの話ではなく、AIを監督役として入れた側の話です。不正を防ぐために導入した仕組みが、結果として選抜そのものの信頼性を崩しました。
今日の3本
アリババ、2.4兆パラメータの「Qwen3.8-Max」を発表——Max級で初のオープンウェイト公開へ
アリババのQwenチームが、2.4兆パラメータの大規模モデル「Qwen3.8-Max」を正式に発表しました。
総パラメータは2.4兆で、アーキテクチャはQwen3.5を土台にしています。同社が公表したコーディングベンチマーク「FrontierSWE」のスコアは、前世代のQwen3.7-Maxの40.7から73.5へ上がりました。
他社モデルとの比較については、主張が分かれています。ITmediaによれば、同社は「Terminal Bench 2.1」でFable 5を、「SWE-bench Pro」でGPT-5.6 Solを上回ったとする一方、「DeepSWE 1.1」などでは両モデルを下回っており、ベンチマークによって優劣が入れ替わります。
API料金は100万トークンあたり入力2ドル・出力6ドルです。デモでは10日以上にわたって自律的なコーディング作業を続けられたと報告されています。
重みの公開は、発表の翌週が予定されています。Max級モデルのオープンウェイト公開は同社として初めてで、中規模の「Qwen3.8-27B」も同時に公開するとしています。
したがって現時点で開かれているのはAPIまでで、自社環境に置いて検証できるようになるのはこれからです。中国発のモデルが最上位の系列まで重みを出す流れが、Max級にも及んだという段階にあたります。
- Qwen3.8-Max: A New Bar for Coding and Cowork(Alibaba Qwen Blog)
- 「Qwen3.8-Max」登場、オープン化は「来週」 一部「Fable 5」「GPT-5.6 Sol」超えの性能うたう(ITmedia AI+)
- China's Alibaba takes another swipe at America's AI supremacy(The Verge)
MiniMax、動画とステレオ音声を同時生成する「MiniMax-H3」の重みを公開——適用地域からEU・英国・韓国・米国を除外
中国のMiniMaxが、動画とステレオ音声を同時に生成する「MiniMax-H3」の重みをHugging Faceで公開しました。
生成できる動画は4〜15秒・最高2K・24FPSで、32kHzのステレオ音声を同時に生成します。アスペクト比は21:9から9:16まで複数に対応します。
中核となるのは330億パラメータのdenseなシングルストリームTransformer「H3-Omni-Transformer」で、テキストエンコーダにはQwen3-VL-32Bの学習済み重みを使っています。推論はDiffusers・ComfyUI・SGLang・vLLMなど主要なフレームワークで動きます。
実務上の要点は性能よりもライセンスにあります。付属する「MiniMax H3 Community License Agreement」は、ライセンス日を2026年8月2日とし、契約の及ぶ範囲を「適用地域(Applicable Territory)」に明示的に限定しています。
その適用地域は「除外地域を除く全世界」と定義され、除外地域はEU・英国・韓国・米国の四つと書かれています。日本はこの四つに含まれないため、適用地域の側にあたります。
除外地域について、契約は流通の制限だけを定めているわけではありません。適用地域の外での使用・複製・改変・頒布・表示、および出力物の利用は本契約では許諾されないと明記されています。
商用利用には条件が二つ付きます。商用の製品・サービスの年間売上が2000万ドルを超える場合はMiniMaxからの書面による事前許諾が必要で、加えて商用の製品・サービスのユーザーインターフェースに「MiniMax H3」の表記を目立つ形で掲げることが求められます。
除外地域が閉ざされたままとは書かれていません。契約は、除外地域に適用される法令や遵守要件を継続的に評価していくとしたうえで、当該地域で展開を検討する者は個別に連絡してほしい、統制と防護措置を前提に許諾すると述べています。
準拠法と管轄も本文にあります。この契約は中華人民共和国香港特別行政区の法に準拠し、紛争は同地域の裁判所の専属管轄に服すると定められています。
つまり同じ重みでも、どこで使うかによって扱いが変わります。これは各国の公法上の規制とは別に、私人間の契約の条項として書かれているものです。日本の企業が動画生成の内製を検討する場合、確認すべきは自社の所在地だけでなく、売上規模と、成果物をどの地域で使うのかという二点になります。
メキシコ国立自治大学UNAM、AI監視のリモート入試が破綻——約5万8000人に対面での再試験
メキシコ国立自治大学(UNAM)が、AIによる監視のもとで初めて完全リモート実施した入学試験について、約5万8000人に対面での「統制試験」を課すことを決めました。
試験は5月下旬から6月上旬にかけて行われ、受験者は約16万人にのぼります。ロックダウン型のブラウザとAIによるウェブカメラ監視を組み合わせ、完全リモートでの実施は今回が初めてでした。
異変は得点分布に現れました。120問中100点以上を取った受験者の割合は、2021〜25年の3.5%から今年は16.3%へ上がっています。110点以上の割合も、同じ期間の0.9%から5.5%へ上がりました。
再試験の対象は今年の合格者にとどまりません。2021年以降の水準であれば各学科の最低合格点で入学していたはずの層も含まれ、合わせて約5万8000人に及びます。
不正の手口は、まだ特定されていません。試験が多肢選択式であるため、AIの利用に特有の痕跡が追いにくいとされています。
授業の開始は8月10日が予定されており、統制試験の詳細は公表されていません。
監視のためにAIを入れた結果、当のAIが監視しきれなかった可能性を大学自身が否定できず、選抜の前提が問い直されています。導入した技術が期待どおりに働いたかどうかを、事後に確かめる手段まで含めて設計されていたかが、この事例の分かれ目です。
そのほかの動き
モデル・API
OpenAIが、常時聞きながら話す音声AI「GPT-Live」のリアルタイム応答システムを六ヶ月で構築した経緯を技術ブログで公開しました。聞くことと話すことを同時に成立させる設計判断が具体的に説明されており、音声を組み込む側の実装検討にも読める内容です。
アップルがiOS 27のパブリックベータでSiriを刷新し、個人の文脈をふまえた対話や端末内データへのアクセスができるようになりました。ただし基盤にはグーグルのGemini系モデルを取り込んでおり、多段階のタスクをこなすエージェントが話題の中心になっている時期に、標準的な音声アシスタントの水準へ追いついた発表として受け止められているとTechCrunchは伝えています。
AWSが、非エンジニアでもアプリを作れる「バイブコーディング」のスタートアップSuperblocksと複数年の共同マーケティング契約を結びました。顧客企業のプライベートクラウド内にツールを組み込めるようにし、データを自社アカウントの外へ出さない点を訴求します。AWSは自前のバイブコーディングエージェントを持たず、マーケットプレイス経由の販売支援に回る立ち位置をとっています。
CNBCが米下院の支出記録を分析したところ、無料アカウントを除くAIツールへの支出約11万3740ドルのうち、OpenAIのChatGPTが798件の取引で約10万580ドルを占めました。Anthropicのクロードは37件・1万3160ドルで二位です。民主党系事務所の支出は共和党系のおよそ3倍にのぼっています。
スクウェア・エニックスが、GoogleのマルチモーダルAI「Gemini」を使ってゲームの品質テストを自動化する取り組みを進めています。AIが画面を見ながらコントローラーを操作して検証作業を自走させる仕組みで、テスト設計からグラフィックの不具合検出、テキストチェックまでを含む自動化基盤の構築を目指しています。
プロダクト
「Armature」が、MCPサーバやAIアプリのバックエンドを計測し、Claude・ChatGPT・Claude Code経由のユーザーセッションを分析するプロダクト分析ツールを公開しました。用途を件数と成功率で自動的にクラスタリングし、APIがすべて200を返していても実際には失敗しているループや隠れた不具合を拾えるとしています。セッションの再生にも対応します。
ITmediaが、両眼カメラと単色ディスプレイを備えた「Rokid スマートAIグラス」を実機レビューしました。この製品はクラウドファンディングのMakuakeで応援購入総額6億円を超え、同プラットフォームの歴代1位を記録しています。
研究
セキュリティ企業JFrogの調査で、SQLiteに関する複数の「重大」CVE報告が、存在しない関数への言及や再現できないPoCを含む捏造だったことが分かりました。AIが生成したとみられるこれらの報告はNVDなど公的な脆弱性データベースにまで登録されており、掲載前の検証プロセスの弱さが露呈しています。
規制・政策
続報です。8月2日、EU AI法の透明性義務の適用が始まり、ディープフェイクやAIが生成・改変したコンテンツに機械可読な表示が義務付けられました。昨日の紙面で扱った汎用AIモデル向けの開示義務とは別の条項にあたります。違反には最大1500万ユーロ、または全世界年間売上高の3%のいずれか高い方の制裁金が科され得るとされています。
サイバーエージェントが、グループの全従業員を対象に総額1000万円の賞金をかけた生成AI活用アイデアコンテストを実施しています。審査では実装の実現性を問わず、大胆な発想を優先するとしています。
ビジネス
AI生成物を人間が一対比較で評価するプラットフォーム「DesignArena」の運営元Intelligenceが、Index Ventures主導のシードラウンドで790万ドルを調達しました。同サービスは世界530万人超が利用しており、フロンティアAI各社が人間評価データの調達先として使っています。運営元は年間経常収益6000万ドルを計上していると公表しました。
Salesforce創業者のマーク・ベニオフらが出資するスタートアップ「June」が、企業システムをスキャンして業務プロセスを分析し、AIエージェントの導入を自動化するプラットフォームを立ち上げました。狙いは、複数システムに分散したデータの断片化や技術的負債がAI導入を止めてしまう場面です。創業者は2019年にSalesforceへ買収されたBonobo AIの創業メンバーです。
ITmediaが、富士通とNECの決算説明会での発言をもとに、両社が「AI需要」と「収益」の関係をどう語ったかを分析しました。富士通は業務プロセスの改善・自動化を伴うAX転換を本質的な課題と位置づけ、NECは着手する領域の優先順位づけとスピードを強調しているとされます。
セールスフォースが、自社サポートサイトでの431万件の対応実績から、AIエージェント単体では顧客対応を完結できないという結論を示しました。CRMデータや対話履歴を統合したうえで、AIが解決できない案件を人間へ滑らかに引き継ぐ設計と、継続的な改善の積み重ねが要点だとしています。
その他
警視庁は、実在する女性が中学1年だったころの体操着姿の写真を生成AIでわいせつに加工し、SNSのグループへ投稿したとして、名誉毀損と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)の疑いで、兵庫県姫路市に住む会社員の男を逮捕しました。加工を依頼したとみられる鹿児島県の高校3年の男子生徒は、同じ容疑で書類送検されています。
容疑は、二人が共謀して2026年2月11日に偽画像2点をSNS上のグループへ投稿したというものです。男子生徒はSNS上の陸上競技の女子選手の画像共有グループから写真を入手し、加工を依頼していたとみられると警視庁少年育成課は説明しています。押収した会社員のスマートフォンからは、わいせつな画像・動画が計約3800点見つかりました。同人物には、別の20代女性3人についても同様に加工した画像を投稿した疑いが持たれています。
二人と被害女性らに面識はありませんでした。SNSに置かれた他人の写真が、そのまま加工の材料として拾われていく経路を示した事件です。
Googleが、Kaggleで開催した無料の5日間集中講座「AI Agents: Intensive Vibe Coding Course with Google」を振り返り、登録者が約35万3000人にのぼったと公表しました。KaggleのDiscordには39万2000人超が参加してリアルタイムでコードを共有し、キャップストーンには1万2000人超が参加して6000件超のプロジェクトが提出されています。
Devin開発元のCognition AIが、日本での展開を強化しています。IT人材の多くがSIer側にいて自社開発力が薄いという日本の外注構造を、課題ではなく成長余地として位置づける立場です。同社は「Devinはエンジニアの代替ではなく、これまでできなかったことをできるようにする道具」と説明しています。
ラグザスの職種別調査で、生成AIの利用率は「人事・採用」と「マーケティング・広報」がともに65.1%で最も高く、「エンジニア・情報システム」の57.4%を上回りました。「企画・商品企画・事業企画」も59.9%で情報システム部門を上回っています。最も低かったのは「カスタマーサポート・コールセンター」の27.4%でした。調査対象は東京都と大阪府の20〜59歳の男女3000人で、比較可能な10職種・計2319人分が分析されています。
ソース: AIニュースインボックス(2026年8月4日収集・30件、一次4件・二次26件)から編集部が選定しました。