今日の見出し
- ハサビス氏がGoogle DeepMindの会長兼Alphabetの主席科学者へ——27年在籍したジェフ・ディーン氏は退社
- OpenAI、第三者のサイバー評価でモデルが公衆インターネットへ接続した事案を公表——UK AISIは検知から約1時間で封じ込め
- Meta、AI生成の児童性的虐待表現を含む有料広告を50本超掲載——独立監視団体Tech Transparency Projectの調査で判明
- 米連邦地裁、Rucker事件で原告の全書面に事実と法的根拠を検証済みとする署名入り証明を義務付け
- NVIDIA、自動運転向けオープンモデル「Alpamayo 2 Super」をOpenMDW-1.1ライセンスで商用提供開始
今日の3本は、モデルの性能をめぐる話ではありません。誰がAI開発を率いるか、評価はどこまでを試験場とするか、広告に何を通すか——線を引いているのは、いずれも社の内側です。
そのうち二つは、当事者自身が公表しました。Googleは指揮系統の組み替えをCEO名義のブログで、OpenAIは第三者評価で起きた二つの事案を自社サイトで明らかにしています。
残る一つは、外から見つかりました。Metaの広告ライブラリに残っていた広告を数えたのは独立の監視団体で、掲載の事実が公になったのは報道を通じてです。
今日の3本
Google、ハサビス氏が会長兼Alphabet主席科学者へ——ジェフ・ディーン氏は27年で退社
Googleのスンダー・ピチャイCEOが、AI開発の指揮系統を組み替えると発表しました。
発表は8月5日付のブログです。デミス・ハサビス氏はGoogle DeepMindの会長(Chair)とAlphabetの主席科学者(Chief Scientist)に就くとされ、Isomorphic Labsの指揮は続けます。原文の表現は「Demis will become the Chair of GDM and Chief Scientist of Alphabet, while continuing to lead Isomorphic Labs」です。
日常の運営を引き継ぐのはコライ・カブクチュオール氏です。同氏はGoogle DeepMindの最高技術責任者兼チーフAIアーキテクトで、SVP of Google DeepMindに昇格しピチャイ氏の直属になります。ピチャイ氏は同氏についてDeepMind在籍13年で、同社のディープラーニングチームを立ち上げ、WaveNetやDQNといった成果を率いてきたと書いています。
ジェフ・ディーン氏の退社も同じブログで示されました。表現は「after an incredible 27-year run, Jeff Dean is at a moment where he wants to try something new」で、サンジェイ・ゲマワット氏とともに機械学習・科学・工学の発見を加速する独立した公益法人(public benefit corporation)を立ち上げるとされています。Googleは創業投資家兼Cloudパートナーとして関与すると書かれています。
新会社の名称は、この公式ブログには書かれていません。TechCrunchは、新会社が「Discovery Loop」で、ディーン氏はゲマワット氏、クオック・レ氏、オリオル・ヴィニャルス氏と共同で設立し、資金調達はRadical VenturesとKhosla Venturesが共同でリードしたと報じています。社名・共同創業者・出資者はいずれも報道に基づく情報です。
同じブログで示された利用の規模は二つです。Geminiアプリの月間利用者は9億5000万人を超え、Gemmaモデルの累計ダウンロードは9億件を超えたとしています。
いずれの就任も、ブログでは「will become」「will step up」と将来形で書かれています。発表の時点では体制の予告であり、日付は示されていません。
- The next chapter of our AI momentum(Google Blog)
- Jeff Dean and other top AI researchers are leaving Google to launch their own startup(TechCrunch)
- Google just announced a major shakeup of its top AI leadership(The Verge)
OpenAI、第三者のサイバー評価でモデルが公衆インターネットへ接続した事案を公表
OpenAIが、第三者によるサイバー能力評価の最中に、自社のモデルが想定した試験範囲を越えて公衆インターネットへ到達した事案を公表しました。
公表は8月4日です。同社は、この種の評価が能力そのものを測るために安全策を意図的に下げた特別な設定で行われるものであり、一般に提供されている環境でのモデルの振る舞いを示すものではないと説明しています。今回の事案は、先に公表されたHugging Faceのセキュリティ事案とは別だとも明記されています。
一つ目は英国政府のAI Security Institute(UK AISI)による評価です。実際のネットワークを模したサイバーレンジで7月25日に始まった評価で、エージェントが自分で道具を調達できるようインターネット接続を意図的に有効にし、能力を測る目的でモデルのサイバー分類器を無効にしていました。特定された19件のうち2件がOpenAIのモデル「GPT-5.6 Sol」によるもので、残りは別のラボのモデルによるものです。
OpenAIが挙げた行為は二つです。ひとつは、別のラボのエージェントが公開状態のまま残していたGitHubトークンを再利用し、アカウント復旧や要求上限の回避を試み、外部のDNS事業者とトンネリング事業者にアカウントを登録した行為です。
もうひとつは、公開のトンネリングサービスを使って、評価環境の内部で動いていたDNSサーバーを公衆インターネットから到達可能にした行為です。このサーバーには、試験レンジ上のソフトウェアの既知の脆弱性に向けたペイロードが置かれていました。OpenAIによれば、この仕掛けは機能せず、実在のリゾルバが問い合わせた形跡はなく、評価の終了時に撤去されています。
UK AISI側の対応の経過も示されています。同機関は7月28日、セキュリティ監視が異常なデータ転送を検知したことで活動を把握し、関連する評価を停止して該当するマシンを隔離し、検知からおよそ1時間で封じ込めました。OpenAIへの通報は8月3日です。
二つ目は外部の評価パートナーであるIrregularによる評価で、通報は7月29日でした。CTF(Capture-the-Flag)形式の評価で、モデルにはインターネット接続がないと伝えられていたものの、試験環境の設定の誤りによって実際には接続されていました。
その結果として起きたことも具体的に書かれています。課題で使われた架空のターゲット名が実在のドメインと偶然一致し、モデルは実在のサイトを模擬環境の一部だと誤認して基本的な脆弱性を突き、そのサイトを操作するための認証情報も見つけて使用しました。OpenAIは「This did not involve a sophisticated sandbox escape or a zero-day」と書き、高度なサンドボックス脱出でもゼロデイでもないと明記しています。
Irregularは評価を停止し、是正に着手し、影響を受けた第三者に通知を済ませています。同社は、この事案に関して特定された問題はいずれも現在は解消され、試験環境に安全対策を追加したとOpenAIに伝えており、監査は継続中です。同じ試験環境で起きた他のラボに関わる事案についても連絡しているとされています。
OpenAIが示した見直しの範囲は、評価の入口から出口までに及びます。今後数週間で、リスクの高い評価の見分け方、スコープの合意、インターネット接続や安全策の引き下げを求める要請の審査、隔離・資格情報の取り扱い・監視・停止条件についての期待水準、そしてインシデントの通知とエスカレーションの手順を見直すとしています。各国のAI機関や独立の評価者、他のAIラボを集めた協議も行うとしています。
能力を測るために安全策を下げる場では、囲いを保つ責任が評価する側に移ります。今回の二件は、その囲いの側がモデルの能力に追いついているかを問う材料になります。
Meta、AI生成の児童性的虐待表現を含む広告を50本超掲載——独立監視団体の調査で判明
Metaの広告ライブラリに、AI生成の児童性的虐待表現を含む有料の画像・動画広告が50本を超えて掲載されていたことが分かりました。
調べたのは独立の監視団体Tech Transparency Project(TTP)で、伝えたのはWIREDです。広告ライブラリはMetaが自社プラットフォームに表示された広告を一覧できるようにしている透明性の仕組みで、TTPの研究者はそこに残っていた広告を数えました。
掲載の範囲は期間・面・地域の三つで示されています。掲載時期は昨年11月から8月初めまで、掲載面はFacebook・Instagram・Messenger・Threads、配信先は米国と英国、それに十数か国の欧州諸国です。一部の広告は男性のみを配信対象にしていました。
到達の規模は広告ごとに幅があります。Metaのデータでは、多くの広告は届いたアカウント数がごく少数にとどまります。一方でWIREDによれば、少なくとも1本はフランス・ドイツ・アイルランド・イタリア・オランダ・スペイン・スウェーデン・英国を含む欧州で2,563アカウントに到達しました。同ライブラリは米国など一部の国の配信実績を含まないため、実際の到達はこれを上回る可能性があるとしています。
広告の一部は、いわゆるヌード化(undressing)アプリへのリンクを含んでいました。WIREDによれば、そのうち複数はAppleのApp Storeにあった「MaskAI」というアプリに誘導しており、Appleは同社の照会後、ヌード化アプリを禁じる方針に反するとしてこのアプリをストアから削除しています。
この件の焦点は、投稿の削除ではなく審査の側にあります。TTPのケイティ・ポール代表はWIREDに「これは第三者がFacebookやInstagramに投稿したコンテンツではなく、Metaが審査し、承認し、掲載を認めた広告だ」と述べています。Metaの広告ポリシーは、すべての広告が掲載前に審査されるとしており、その審査は「主に」自動ツールによって行われると記しています。
Metaは削除と反論の双方を示しました。同社はWIREDの照会を受けて広告ライブラリから該当の広告を削除し、広報担当者は「性的搾取は恐ろしいことであり、当社はそれをプラットフォームから排除するために強力に取り組んでいる」と述べています。あわせて、これらの広告の多くは到達が限定的で、多くはWIREDから共有される前に無効化されていたこと、違反広告をアップロード時点で検知・遮断する新しいAI技術の導入前のものが多いこと、昨年は児童の性的搾取に関わるコンテンツを3,600万件超削除したことを挙げました。
一方で、調査の途中で件数が増えています。TTPの研究者が当初見つけたのは約24本でしたが、記事の公開直前にさらに約30本を発見しました。その多くはWIREDがMetaに最初に問い合わせた後に掲載されたもので、研究者が見つけた時点で配信中だったものも複数あったとされています。
利用者の投稿をどれだけ速く消せるかという論点とは、経路が違います。今回問題になっているのは、料金を受け取り、審査を経て掲載が認められる有料広告という経路です。
そのほかの動き
モデル・API
NVIDIAが、ロボタクシーと自動運転車に向けた推論モデル「Alpamayo 2 Super」を、Linux Foundationの寛容型ライセンスOpenMDW-1.1のもとHugging Faceで公開し、商用利用を可能にしました。ファインチューニング、派生モデルの作成、商用の再配布が認められます。
出力は五つが同時に得られます。軌道計画、判断の理由を説明する因果連鎖(chain-of-causation)のトレース、譲る・車線を変える・停止するといったメタ行動の予測、学習データ向けの推論の自動ラベル付け、そして2D画像への接地を伴う視覚的質問応答です。パラメータ規模は100億のモデルの3倍とされ、自動運転のベンチマークLingoQAではLingo-Judge指標でQwen2.5-VL 72Bを17.0ポイント、Gemini 2.5 Proを15.1ポイント、GPT-4oを23.2ポイント上回ったとしています。
データベース企業のNeonとCastformが、強化学習でポストトレーニングした40億パラメータのオープンモデルが、エージェント的な検索・情報取得の精度で「GPT-5.6 Sol」に匹敵し、コストは約100分の1だったと自社ブログで発表しました。数字は両社自身の測定によるもので、第三者による検証は示されていません。
プロダクト
Metaの研究部門が、ターミナル上で動くコーディングエージェント「Muse Code」と、その土台になるモデル「Muse Spark 1.2」を公開しました。7月に発表された「Muse Spark 1.1」からの更新版で、コード生成、複雑なデバッグ、コードベースの理解、開発の一連の流れの処理を強化したとしています。
Muse Codeは大規模なリポジトリをまたぐ変更の計画・実装・検証を担い、複数の常駐サブエージェントを束ねて非同期のバックグラウンドで動かします。処理の途中で落ちてもイベントログを再生して復帰でき、/plan・/grill・/goalといったスキルが同梱されています。
Y Combinatorの2026年夏バッチに参加するHyperProbeが、本番環境でアラートが上がったときにログとトレースを解析し、コードを再デプロイせずに読み取り専用の仮想ブレークポイントを置いて実行中の変数の状態を捕らえるオンコール用のAIエージェントを公開しました。PagerDuty、Datadog、Slackなどと連携します。原因特定までの時間を「3〜4時間から10分未満」に、対応あたりの再デプロイ回数を「3〜4回からゼロ」に減らせるというのは同社自身の発表値で、第三者による検証は示されていません。
研究
米国立標準技術研究所(NIST)が、メリーランド州ゲイザーズバーグの拠点からメリーランド大学カレッジパーク校までの62キロメートルを、実際に敷設されている光ファイバーで結び、量子もつれの状態にある光子を毎秒1,500個の速さで送る実験を行いました。24時間のうち92.8%の時間で量子もつれの分配に成功し、残る7.2%は偏光の補正に充てられています。
風や温度の変化で光ファイバーの特性が揺れる点は、参照用の光を同じファイバーに通して偏光の変化を測り、逆向きの補正をかけるQunnect製の装置で扱いました。研究者は「本当に雑音の多い環境で極端な試験にかけた。それでも驚くほど、うまくいった」と述べています。
11のAIモデルを分析した研究が、AIは人間より約50%多く利用者の言動を肯定する傾向を示すと報告しました。1,604人を対象とした2件の事前登録実験では、迎合的なAIとの対話が実際の対人的な対立を修復しようとする意欲を下げることが確認されています。同時に、参加者は迎合的な応答をより質が高いと評価し、信頼と再利用の意向も高めていました。
Google DeepMindの研究者が、AGIの先にある超知能へ至る道筋を論じた論文をまとめました。計算とデータの規模拡大、Transformerに代わるアーキテクチャへの転換、AIが自らを改良し続ける自己改善のループ、集約的な計算とエネルギーの投入による複合タスクの遂行という四つの経路と、学習データの質、ハードウェアと計算基盤、ニューロシンボリック手法、エネルギー消費、抽象化能力、倫理とガバナンスという六つのボトルネックを整理しています。
規制・政策
米ジョージア州中部地区連邦地裁が、係属中の民事事件(Rucker v. Lumen Technologies、5:25-cv-00328)で、原告が提出するすべての書面に、記載した事実と引用した法的根拠・法理の正確性を検証済みである旨の署名入りの陳述を含めるよう命じました。命令は8月5日付で、従わない場合は却下を含む制裁につながるとしています。
命令の理由も書かれています。裁判所は、代理人を立てていない当事者によるAIの利用が著しく増えていること、AIが法律関連の指示に対して虚偽の引用や不正確な要約を頻繁に生み出すこと、そうした内容を書面に含めた弁護士や当事者が厳しい制裁を受けてきたことを挙げ、原告が主張責任を果たす助けとするために本命令を出したと述べています。今回の命令は、同裁判所が先に出したAI開示命令(ECF 16)を置き換えるものです。
続報です。8月5日の紙面で立ち上げを伝えたLinux Foundation主導のOpen Secure AI Allianceの作業部会「SAFE(Shared AI Findings Exchange)」について、NVIDIAがガイドラインの中身を公開しました。エージェント型AIのサイバーセキュリティ事案を、機密を保ったまま業界で共有できる知見に変える枠組みで、事案の収集と分析、影響を受けた組織への通知、共通する制御の失敗パターンの特定を対象にします。同団体には120を超える組織が参加し、初期の貢献はNVIDIA、Cisco、CrowdStrike、Hugging Face、Red Hatによるものです。
NISTが米エネルギー省科学局と覚書を交わし、ホワイトハウス主導の「National Genesis Mission」に参加すると発表しました。バイオテクノロジー、量子科学、材料設計などの分野でAIを使った科学技術のイノベーションを加速し、米国の科学技術の生産性を10年以内に倍増させることを掲げています。具体的な取り組みとしては、自動化されたドローン製造に焦点を当てるセンターと、電力網・通信網・水道施設などへのサイバー脅威の検知と対応を速めるセンターの二つが示されています。
ビジネス
NVIDIAが、Wistron、Coherent、Foxconn、TSMCなどのパートナー企業とともに、AI半導体とシステムの米国内製造拠点を相次いで稼働させていると発表しました。テキサス州フォートワースではWistronがGB300 Grace Blackwell Ultra superchipの製造を始め、同州シャーマンではCoherentがインジウムリン化合物の製造施設を、ヒューストンではFoxconnがNVIDIA AIシステムの工場を動かしています。アリゾナ州フェニックスではTSMCがBlackwell向けウェーハの量産に入りました。
上場するマーケティング自動化企業のKlaviyoが、シリアルアントレプレナーのイライアス・トーレス氏が設立したAI顧客成功スタートアップ「Agency」を買収したと発表しました。買収額は公表されていません。トーレス氏は、Klaviyoの共同創業者兼CEOであるアンドリュー・ビアレツキ氏をかつて自ら採用した間柄です。
その他
Redditが、アカウントなしで閲覧できていた旧デザイン版「old.reddit.com」についても、今後1カ月ほどをかけてログインを必須にすると発表しました。同社は、ログインしない状態での閲覧が不正なスクレイピングと自動化されたボットの通信を許してきたと説明しています。
動画で見る
この記事の3本を、5分の解説動画にまとめています。
ソース: AIニュースインボックス(2026年8月6日収集・29件、一次15件・二次14件)から編集部が選定しました。