今日の見出し

  • Qwen、最上位Max級を初めてオープンウェイトで公開——総パラメータ2.4兆・有効化950億
  • SpaceXAI「Grok 4.6」公開——長時間動くエージェントに重心、100万トークンあたり入力2ドル・出力6ドル
  • OpenAI、上位1割の企業は1人あたり出力トークンが8.3倍と報告——1月時点は2.6倍
  • GeminiアプリのMAUが10億人を突破——Googleで14番目の大台到達製品に
  • メルカリ、Claude Codeを全社展開——MDMとIDPを連携させて権限を出し分け

今日の3本は、性能の先端を取りにいく動きと、その配り方をめぐる話が並びます。前の2本が「どこまで上がるか」の話で、3本目は「どこまで行き渡っているか」の話です。

Qwenチームが動かしたのは、最上位を置く場所です。これまで商用APIの向こう側にあった規模のモデルを、重みごと外に出しました。

SpaceXAIが動かしたのは、モデルの重心です。単発の応答ではなく、長い時間走り続けるエージェントの側に寄せています。

OpenAIが出したのは、配られたあとの話です。同じモデルに手が届く企業のあいだで、使い方の差がすでに開いていると自社データで示しました。

今日の3本

Qwen3.8、最上位Max級を初めてオープンウェイトで公開

Qwenチームが、総パラメータ2.4兆・有効化パラメータ950億のモデル「Qwen3.8-2.4T-A95B」を、Hugging Faceでオープンウェイト公開しました。

このニュースには前日までの経緯があります。当欄では8月10日号と8月11日号で「8月12日公開予定」として追い、8月12日号では予定日の当日に置かれていないことをそのまま書きました。Hugging Faceの公式Qwenアカウントで同リポジトリが最後に更新されたのは日本時間8月12日19時24分で、予告された週のうちに公開された形です。

構成はMoE(混合エキスパート)です。モデルカードによれば92層・エキスパートは計512基で、トークンごとに10基のルーティングと1基の共有を動かします。総パラメータ2.4兆に対して、実際に働くのは950億という設計です。

扱える文脈の長さも公表されています。モデルカードの記載は、ネイティブで262,144トークン、拡張時は最大1,010,000トークンです。

モデルカードは「Qwen3.8で初めて、Qwen-Max級のモデルをオープンな形で出す」と述べています。最上位のMaxクラスが重みごと公開されたのは今回が最初、というのが公開元の言い分です。

モデルカードの掲載値では、Terminal Bench 2.1が86.6でOpus 4.8の84.6を上回り、PaperBenchは93.0でGPT-5.6 Solの90.5を上回り、IFBenchは82.8で前世代のQwen3.7-Maxの79.1から伸びています。

前に出ているのは一部の項目です。同じ表のSWE-bench Proは67.7で、Fable 5の80.0を下回ります。独立した測定は公表待ちです。

ライセンス名は「qwen3.8-max」で、PC Watchの解説によれば基本は無償ながら、月間アクティブユーザー1億人超または月商2,000万ドル超のサービスはUI上へのモデル名表記が必須となり、直近12か月の連結売上が5,000万ドルを超える企業がMaaSなどで商用展開する場合は別途ライセンス契約が要ります。社内利用のみであれば対象外とされています。

SpaceXAI「Grok 4.6」公開、長時間稼働するエージェントに重心

イーロン・マスク氏のAI企業SpaceXAIが、新モデル「Grok 4.6」を公開しました。

同社が挙げる重心は、長く走り続ける仕事です。公式の発表文は、Grok 4.6が「長時間稼働するエージェントと、より野心的な対話・視覚的作業」に特に焦点を当ててGrok 4.5の上に積み上げたモデルだとしています。

総合指標の位置は、同社の掲載値で示されています。発表文が載せるArtificial Analysis Intelligence Indexのスコアは61で、GPT-5.6 Sol Maxと同じ値です。同じ表ではFable 5 Maxが62、前世代のGrok 4.5 Highが56とされています。

価格は据え置きです。100万トークンあたり入力2ドル・出力6ドルで、応答を速くしたfast版はその2倍だと発表文に記載があります。

提供はすでに始まっています。同社によれば、CursorとGrok Buildで当日から使えるほか、APIと、OpenRouter・Vercel・Cloudflareなどのパートナー経由でも提供されます。

第三者の測定機関Artificial Analysisは「Claude Opus 5(100万トークンあたり入力5ドル・出力25ドル)とGPT-5.6 Sol(同5ドル・30ドル)を60%超下回る」と書いています。この比較は同機関のもので、発表文が載せているのは自社の価格までです。

同機関は自前の測定値も公表しています。実務エージェント評価GDPval-AA v2のEloは1,753でClaude Opus 5に次ぐ位置とされ、1つの課題を終えるまでの平均はおよそ53ターン・入力約5億トークンで、Claude Opus 5のおよそ103ターン・約20億トークンより少ないとしています。コンテキスト長はGrok 4.5から変わらず50万トークンです。

なお同機関の総合指標では、Grok 4.6の61はClaude Opus 5(max)の63とFable 5(max)の62に次ぐ位置づけになります。同じ61という数字でも、SpaceXAIの発表文は「GPT-5.6 Solと並んだ」側から、Artificial Analysisは「先頭の2つに次ぐ」側から書いています。

OpenAI、企業のAI活用の差が開いていると報告

OpenAIが、企業のあいだでAIの使い方の差が広がっているとする2本のレポートを公表しました。

1本は法人顧客の利用実態をまとめた「Enterprise Signals」、もう1本は併載のワーキングペーパー「How Organizations Use AI: Evidence from ChatGPT」。いずれも同社が持つ利用データにもとづく自社集計です。

差の大きさは、1人あたりの出力量で測られています。同社は毎月、法人顧客をアクティブユーザー1人あたりの出力トークン数で並べ、上位10%を「フロンティア企業」、45〜55パーセンタイルを「一般企業」と定義しています。6月時点で前者は後者の8.3倍を出力しており、1月の2.6倍から3倍に開いたとしています。

内訳の第一は、使われ方そのものの変化です。6月時点で、法人顧客のCodexとChatGPTを合わせた出力トークンのうち64%をCodexが占めており、同社はこれを、質問への回答から作業の委任へ移りつつある表れだと説明しています。

第二は、機能の使いこなしの差です。週次のアクティブユーザーのうちPluginsを使う割合は、フロンティア企業で21%、一般企業で9%です。skillsについては19%対3%で、同社は自社内のPlugins週次利用が95%であることを引き、まだ伸びしろがあるとしています。

第三は、広がっている職種です。2月以降の法人向けCodexの週次アクティブユーザーは、法務で108倍、営業と採用でそれぞれ41倍、マーケティングで26倍に増えた一方、エンジニアリングは5倍にとどまっています。もともと少なかった職種ほど倍率が大きく出る点は割り引く必要がありますが、伸びの中心がソフトウェア開発の外側へ移っていることは読み取れます。

第四は、社内での分布です。導入から半年後の時点で、若手社員は経営層より週に13通多くAIとやり取りしていたとしています。同社は、調査回答では経営層の利用率が高く出るのに対し、実際の会話データでは逆になると述べています。

法務部門の108倍という数字は、日本の読者にも直接関わります。契約・調査・書面の下ごしらえは、外に出せない資料を扱うぶん導入が遅れやすい領域です。その領域で最も伸びたと同社が報告している以上、社内規程やアクセス権限の設計が追いついているかどうかが、そのまま差になって表れます。

そのほかの動き

モデル

Alibabaが開発するQwen3.8シリーズの小型版「Qwen3.8-27B」は、8月15日0時にオープンウェイトで公開される予定だとPC Watchが伝えています。前世代「Qwen3.6-27B」の後継にあたり、上位のQwen3.8 Maxで培ったコーディングとエージェント処理の技術を軽量化して引き継ぐとされます。同誌によれば、ハイエンドGPUやRyzen AI Max搭載PCといった手元のハードウェアで動く規模を狙っており、ネイティブでマルチモーダル・多言語に対応します。

NVIDIAが、常時稼働型のエージェント向けに設計した300億パラメータのオープンモデル「Nemotron 3.5 Lightning」を公開しました。MoE構成で推論時に動くパラメータを30億に抑えながら、約4倍の規模を持つOpenAIの「gpt-oss-120b」と同等の評価を得たとしています。Artificial Analysis Intelligence Indexでは24ポイントで前世代から9ポイントの改善、出力速度は毎秒約670トークンとされ、重みに加えて学習データとレシピも「OpenMDW-1.1」ライセンスで公開されています。

プロダクト

Googleが8月12日、年次イベント「Made by Google 2026」でPixel 11シリーズとPixel Watch 5、追跡タグ「Pixel Tag」を発表し、あわせてGeminiの新機能を披露しました。Pixel 11は899ドルからで前モデルより100ドル上がり、ストレージは256GBに倍増します。Pixel Tagは29ドル(4個セット99ドル)、Pixel Watch 5は399ドルからです。

GoogleのCEOスンダー・ピチャイ氏が8月11日、「Gemini」アプリの月間アクティブユーザー数が10億人を超えたと発表しました。同社の製品としては14番目の10億人到達です。利用の内訳もあわせて公開されており、ユーザーの63%が音声で使い、学習に関する質問の38%には添付ファイルが伴い、iOSのアクティブユーザーは1億人を超えているとしています。

SpaceXAIが、独立して業務をこなす「AIチームメイト」型のエージェント「Grok Bot」をベータ公開しました。The Vergeによれば、ボット同士がメッセージをやり取りしたり、グループチャットで作業を分担したりでき、利用者は自分のアカウントへのサインインをボットに許可する必要があります。提供はデスクトップとiOSで、対象はSuperGrok Heavyなどの有料契約者、企業・チーム向けはウェイトリスト登録制です。

研究

Google DeepMindが、手話をテキストに変換する多言語モデル「SL2T」を発表し、Pixel 11のGboardとLive Transcribeで米国手話から英語への変換機能として提供を始めました。50以上の手話・10万時間超のデータで学習しており、プライバシー保護のためカメラ映像そのものではなく骨格座標だけをサーバーへ送る設計だとしています。

政策

米連邦地裁(ペンシルベニア州中部地区)のメハルチック判事が8月12日、担当する全事件について「生成AI利用証明書」の提出を義務づける命令を出しました。書面作成に生成AIを使った当事者は、使用したツール名、AIが作成した部分、人間が正確性を確認したかどうかの3点を開示する必要があります。対象は代理人弁護士だけでなく本人訴訟の当事者も含み、違反は制裁の対象になり得ると明記されています。

ビジネス

メルカリが2026年5月に「Claude Code」と「Claude Cowork」の全社展開に踏み切り、その運用を支える仕組みを@ITで明かしました。MDMのJamfとIDPのOktaを同期させ、端末の利用者が開発者か非開発者かに応じて設定を自動的に出し分けています。非エンジニアに原則として提供するのはNotion AIとClaude Coworkの2つで、同社は「非エンジニアに『Claude Code』をそのまま展開するのは、セキュリティ観点で非常にリスクがあります」と述べています。全モデルの利用はOSSの「LiteLLM」を経由させ、有効期限のない事業者発行のAPIキーを直接配らず、短命なキーに置き換えて中継しています。

中国発のAIエージェント「Manus」を運営するManus社が8月11日、米Metaから分離して独立企業として運営を再開すると発表しました。Metaは2025年12月にManusを約20億ドル規模で買収したと報じられていましたが、中国の国家発展改革委員会が2026年4月に買収を認めず撤回を命じたとロイター通信が伝えています。分離に伴い、Meta傘下だった2025年12月29日以降に一部ユーザーが生成したデータは、シンガポール時間の8月23日から24日にかけて削除される方針です。

調査会社のGartnerが、2030年までに企業向けソフトウェア支出のうち最大2,340億ドル(約37兆円)がエージェント型AIの影響にさらされるとの予測を発表しました。2030年時点の企業向けSaaS支出のおよそ20%にあたります。同社は、エージェントが複数のシステムをまたいで仕事を終わらせるようになると、利用者数と収益が連動するシート課金の前提が崩れるとみており、既存ベンダーには「インタフェースに基づく価値」から「成果に基づく価値」への移行が求められると指摘しています。

ソース: AIニュースインボックス(2026年8月13日収集・37件、一次16件・二次21件)から編集部が選定しました。