今日の見出し

  • NVIDIAの自社ハーネス「AVO」、ARC-AGI-3の公開セットでRHAEスコア100.00——Claude Opus 5単体は約30%
  • Anthropic、Claude Mythos 5を法人の脆弱性スキャンへ開放——3,500万ドル分のClaudeクレジットを配る基金も新設
  • ExcelのAI関数「=COPILOT」、一般提供に届かないまま2026年9月14日で終了
  • 軌道データセンターのStarcloud、2億5,000万ドルを追加調達して評価額23億ドルに
  • 三菱UFJ銀行、海外拠点の事務標準化の工数を11人日から1人日へ減らせる見込みと説明

今日の3本は、モデルの中身より外側の作りが結果を決めた話で揃っています。外側の作り方はそれぞれ違い、置かれた場所ごとに決まるものが変わりました。

ベンチマークの側では、包み方が点数を決めました。NVIDIAが測ったのは、モデルの周りに記憶と監督を足した仕組みのほうです。

危険な能力の側では、渡し方が線を引きました。Anthropicが開いたのは、防御の成果物を受け取る窓口です。モデルそのものは仕切りの向こうに置いたままにしました。

表計算の側では、畳み方が前例になりました。Microsoftが引くのは関数という形の入口で、AIそのものはサイドペインの側に残ります。

今日の3本

NVIDIAの自社ハーネス「AVO」、ARC-AGI-3の公開セットで満点

NVIDIAが、自社のエージェント・ハーネス「AVO」でARC-AGI-3の公開セットを満点で抜けたと公表しました。

公表は8月21日付のNVIDIA Technical Blogです。同社の測定によれば、AVOはこのベンチマークの公開セットで25の環境にまたがる183レベルをすべて完走し、RHAEスコアは100.00に達しました。

比較の起点はモデル単体の成績です。同じ公開セットで、Claude Opus 5をそのまま走らせたときのスコアは約30%にとどまっていました。

AVOはモデルを包む仕組みです。永続的な記憶と、下位のエージェントを監督するスーパーバイザーエージェントを備え、長い時間がかかる作業のあいだ状態を保ちます。

効率の面でも数字が出ています。NVIDIAは同じ公開セットで、比較対象の「VISTA」というシステムより環境へのアクション数を12%少なく抑えて完走したとしています。

ベンチマークの外でも試しています。GPUカーネル最適化の実験では、AVOが7日間連続で稼働し、500種類を超える最適化の方向を探索して40のカーネル版をコミットしました。

その成果物の性能も同社が測りました。生成されたマルチヘッドアテンションのカーネルは、NVIDIA DGX B200上でcuDNN比で最大3.5%、FlashAttention-4比で最大10.5%上回ったとしています。

数字の出どころは押さえておく必要があります。ここまでの数値はいずれもNVIDIA自身が公開セットで測った自己申告で、第三者による追試はこれからです。

AVOの位置づけについて、同社のAdel El Hallack氏は新製品と別のものだと説明しています。同氏によれば、AVOは「Nemo」ブランドで公開しているオープンなハーネス構築用コンポーネント群の一部にあたります。

Anthropic、Claude Mythos 5を防御側へ開放し3,500万ドル分のクレジット基金を新設

Anthropicが、最上位モデル「Claude Mythos 5」をサイバー防御の側で使えるようにしたと発表しました。

公表は8月21日付のclaude.comのブログです。同日から使えるようになったのは法人向け「Claude Security」の脆弱性スキャンで、Claude Enterprise向けのパブリックベータという扱いです。

課金は既存の枠に収まります。追加料金を置かない通常のトークン課金で、結果はCWE分類・確度・深刻度・修正案の形で返り、適用の前に人間のレビューと承認が要ります。

設計の要点は、利用者とモデルのあいだに置いた仕切りです。利用者はモデルそのものに触れる代わりに、パッチやアラートという防御の成果物だけを受け取ります。

基金の中身は現金と別です。同社が新設する「Defender Advantage Fund」の3,500万ドルはClaudeのクレジットで、オープンソースの保守者がコードを守るのを助ける組織へ配られます。

配り方はこれから決まります。初回は少数の大型パイロット助成から始め、受給先の公表は「数週間のうち」だと同社は書いています。

発表のうち、提供がこれからの部分もあります。パートナーのサイバー防御製品へのMythos 5の組み込みは「取り組んでいる」段階で、Cyber Verification Programの拡大も先の話です。

拡大の順序も示されています。同社は数週間のうちにOpusとSonnetの広い両用能力へ対象を広げ、Mythosクラスはその後だとしています。

別枠の直接支援もあります。4月に始めた「Project Glasswing」では、オープンソースのセキュリティ組織へ400万ドルの直接寄付を行っています。

この一手は、前日に本欄で伝えた話の裏返しの位置にあります。Grokで見つかった暗号文経由の経路は、Adversa AIが6月3日に報告してから修正を待つ状態が続き、同社は8月19日時点でも再現できたとしています。

同じ種類の能力が、片方では窓口を絞って渡され、もう片方では稼働中の製品に残ったままです。渡し方を設計するかどうかで、能力の向く先が変わるという対比になります。

ExcelのAI関数「=COPILOT」、一般提供に届かないまま9月14日で終了

MicrosoftがExcelの自然言語AI関数「=COPILOT」を2026年9月14日で終了します。

同社のサポートページの言い方は「will no longer be available」です。この関数はセルに自然言語の指示を書いて結果を返させる仕組みで、FrontierとMicrosoft 365 Insiderの両プログラムに留まったまま、一般提供に届かずに畳まれます。

利用の条件も絞られていました。職場・学校のアカウントではCopilotアドオンライセンスが要り、個人ではMicrosoft 365 Premiumの加入者だけが使えました。

計算そのものにも上限がありました。10分あたりの計算は最大100回までで、ConfidentialおよびHighly Confidentialのラベルが付いたブックでは計算の対象から外れていました。

ここは読み違えやすいところです。ExcelのAIそのものが引き上げる話ではなく、Microsoftは一般提供済みの「Copilot in Excel」(サイドペイン)へ利用者を誘導しています。

先行提供の起点は媒体の記述です。2025年8月にInsiderで始まったという時期はPC Watchによるもので、Microsoftのサポートページは開始時期を書いていません。

企業のAI導入計画から見ると、この一件は前例として残ります。関数という形で表計算の言語の中に入った機能が、一般提供の段に届かないまま引かれました。

そのほかの動き

モデル・API

Ornithが、Qwen3.5とGemma 4を土台に自己改善ループで拡張した「Ornith-1.5」をMITライセンスで公開しました。最大規模の397Bモデルはコーディングとエージェント系のベンチマークでClaude Opus 4.8と競る水準で、内訳はTerminal-Bench 2.1がOrnithの86.1対Opusの85.0、DeepSWEはOpusの59対Ornithの56という1勝1敗です。重みはHugging Faceで公開済みで、ゲートは掛かっていません。

Unslothが量子化技術「Dynamic v3.0」を発表し、Qwen3.8-27Bに適用した複数の圧縮版を出しました。6.2GBという数字は最小の1bit版(UD-IQ1_S)のもので、上位1%相当の精度を約72%保ちつつ元のサイズから89%削減する一方、32トークン予測での精度は約25%から8〜10%未満へ落ち、ツール呼び出しの失敗やループが出るとされています。2bit版(UD-Q2_K_XL・約9.83GB)は精度の低下を抑え、HTMLの生成なども安定して行えるという説明です。

プロダクト

OpenAIが、macOS版ChatGPTデスクトップアプリ向けにAppleの「メッセージ」と連携するプラグインを公開しました。会話の検索・整理から返信の下書き・送信まで任せられる作りで、対象はApple Silicon版のビルドに限られ、使えるチャットは「Codex」と「ChatGPT Work」だけです。都度の承認を省く「Always allow sending to this chat」を選ぶと送信前の最終確認が消えるため、OpenAI自身が慎重な運用を呼びかけています。

Anthropicが、Claudeと生成AI全般の使い方をコース形式で学べる無料の学習サイト「Claude Academy」を公開しました。同社は自社の新入社員研修で使ってきた「4D AI Fluency Framework」やエージェント管理の実務を土台にしたと説明し、操作手順よりも「どの仕事をAIに任せ、どこを自分で担うか」の判断に重きを置いたとしています。翻訳機能はα版の扱いで、日本語でも読めます。

FANZAを運営するデジタルコマースが、AIで制作した成人向けコンテンツの制作から公開までを支援するプラットフォーム「FANZAスタジオ」を出す予定で、8月24日からβ版の先行体験を始めます。生成AIによる制作物の著作権、年齢確認、プラットフォームの責任といった論点が同時に乗る領域で、運用の設計がそのまま前例になります。

研究

Google DeepMindが、20年以上稼働を続けるMMO『EVE Online』の開発元Fenris Creationsと研究パートナーシップを結びました。継続学習・長期記憶・長期計画・複雑なマルチエージェント経済という、現行モデルが苦手とする課題に持続的な仮想世界をあてる狙いです。研究はまずライブのプレイヤーから切り離したオフライン環境とEVE Frontierで進め、本編への統合は能力が十分に育った段階でのみ検討するとしています。

Nari Labsが、オープンソースの音声合成モデルQwen3-TTS(1.7B・CustomVoice)をNVIDIA H100 SXM 1基で秒間10リクエスト・p95で50ミリ秒未満の初回応答まで速めた実装とベンチマークを公開しました。同社の試算では100万文字あたり約2ドルで、商用APIより大幅に安いとしています。数値はいずれも同社自身の計測にもとづくもので、第三者の検証はこれからです。

政策

ペンシルベニア東部連邦地裁で係属中のEPAM Systems対Raoの営業秘密訴訟で、生成AIの出力そのものの扱いが争点に浮かびました。封印が求められている文書について、被申告人側は会社が費用を負担する個人アカウントのGemini(プレミアム契約)にプロンプトを入力し、Googleドキュメントへエクスポートして作ったものだと宣誓供述で説明しています。EPAM側の証人はこれを、機密情報を与えて生成AIに作らせたものだと主張しており、双方の言い分は真っ向から対立したままです。

ニューヨーク・デイリーニューズやシカゴ・トリビューンなど新聞発行元8社がマイクロソフトとOpenAI関連事業体を訴えている著作権訴訟で、第一次修正訴状が提出されました。再編後のOAI Corporation, LLCとOpenAI Holdings, LLCが被告に加わり、直接侵害・代位侵害・DMCAの著作権管理情報の削除・ランハム法および州法上の商標希釈化という5つの請求が存続しています。寄与侵害と普通法上の不正競争の請求は、裁判所の命令で既に却下されました。

OpenAIが、Zero Data Retention(ZDR)を土台にした新しい安全機構「Private Safety Processing」を一部顧客向けにプレビュー提供しました。個々のやり取り単位で評価する従来の形に対し、関連するやり取り全体を対象にリスクを自動で検知する作りで、同社はコンテンツ本体へは触れず最小限のシグナルだけを受け取ると説明しています。展開範囲の拡大は9月を予定しています。

メタ製AIグラスの普及にあわせて、装着者を検知する非公式アプリが相次いで登場し、学校・裁判所・飲食店では着用を断る動きが広がっているとArs Technicaが伝えました。電子フロンティア財団(EFF)は、録画中を示すランプがシールで簡単に隠せる点を問題視し、メタが顔認識のような踏み込んだ機能を足す可能性にも警鐘を鳴らしています。

ビジネス

軌道上でAI推論を行う衛星を開発するStarcloudが、3月のシリーズA(1億7,000万ドル)に2億5,000万ドルのエクステンションを積み、評価額23億ドルになりました。リードはManhattan Westで、NVIDIA、Cisco、Benchmark、EQT、Somaなども参加しています。資金は大型の製造拠点と、SpaceXのStarshipでの打ち上げを予定する最大機「Starcloud-3」に充てる計画で、Falcon 9が2028年に終了予定という打ち上げ枠の細りが同社の資金使途を規定しています。

三菱UFJ銀行が、世界30カ国の拠点ごとにばらついた事務手続きを突き合わせる「AIフローチャート」を作り、1事例あたりの工数が11人日から1人日へ減る見込みだとAWS Summit Japan 2026で説明しました。この9割減は導入後の実測と別の見込み値で、関係者との協議に要する1〜2人月は変わりません。2025年5月までの汎用LLMだけの試みは、拠点ごとに粒度の違うフローチャートが出て比較できず失敗しており、約2万件のトリプルからオントロジーとナレッジグラフを組んで業務知識を先に教えた点が分かれ目になっています。

米司法省(DOJ)が、Andreessen Horowitz(a16z)のパートナーが競合関係に入った投資先企業の取締役を兼務している問題を、約1年にわたり調査していると報じられました。対象はDatabricksとFivetranで、適用が検討されているのは112年前に制定され、ベンチャーキャピタルへの適用例がほとんどない独禁法の条項です。

経費精算サービスRampの企業向けカード・支払いデータによれば、2026年7月時点でAnthropicのサブスクリプションまたはトークンに課金している米国企業の割合は43.5%、OpenAIは39.7%でした。5月時点の41%対39.5%と比べるとOpenAIが差を詰めた形ですが、この数値はハイテク企業に偏った7万社超のサンプルにもとづき、2026年4月から5月にかけて集計方法が変わっているため、変更をまたいだ単純比較は避ける必要があります。

ソース: AIニュースインボックス(2026年8月22日収集・45件、一次9件・二次36件)から編集部が選定しました。