今日の見出し

  • ソニーとワーナーの音楽出版社35社、Anthropicと共同創業者2名を著作権侵害で提訴——訴えが起こされた段階で、判断はこれから
  • キオクシアとサンディスク、政府支援を前提に2032年までに日本で約5兆円の投資を見込むと発表
  • AIクラウドのLambda、10億ドルの私募短期債でNvidia製チップを調達しMicrosoftへリース
  • オープンソース120件のうち37件が、AIの支援を受けた貢献を全面的に禁止
  • Nvidiaの優位はGPU単体からデータセンター全体の構成へ移るという読み

今日の3本は、AIを支えているものに誰がいくら払うのか、という一点で並びます。1本目は、学習に使った作品の対価です。音楽出版社35社が、Anthropicと共同創業者2名を相手取って著作権侵害の訴えを起こしました。

2本目は、記憶装置をつくる工場です。キオクシアとサンディスクが、政府支援を前提として2032年までに約5兆円の投資を見込むと発表しました。3本目は、チップを買うための借金です。AIクラウドのLambdaが、10億ドルの私募短期債でNvidia製チップを調達しました。

払う相手が、権利者から国へ、そして貸し手へと移っていきます。同じ「AIを支える費用」でも、誰に向かって払うのかで話の性質が変わる、という並びです。

なお、日曜の朝は一次発表そのものが少ない日でした。OpenAI・Google・Google DeepMindの公式フィードはいずれも8月28日で止まっており、8月29日付の新規投稿はありませんでした。フィードは全18源が正常に応答していますので、取り逃しではなく、静かだったということです。そのぶん、1本目は訴状の原本にあたって厚めに書いています。

今日の3本

1. ソニーとワーナーの音楽出版社35社、Anthropicと共同創業者2名を著作権侵害で提訴

ソニー・ミュージックパブリッシング系24社とワーナー・チャペル系11社の計35社が8月28日、Anthropicと共同創業者2名を相手取り、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所サンノゼ支部に著作権侵害の訴状を提出しました。

事件は Sony Music Publishing (US) LLC v. Anthropic PBC、事件番号 No. 5:26-cv-09217(N.D. Cal. サンノゼ支部)です。訴状は48ページで、陪審審理を請求しています。以下に記すのは訴状に書かれた原告側の主張であり、裁判所の認定ではありません。判断はこれからです。

まず押さえておきたいのは、被告の顔ぶれです。訴状の表紙に並んでいるのは「ANTHROPIC PBC, DARIO AMODEI, AND BENJAMIN MANN」で、法人だけでなく共同創業者2名が個人として被告に入っています。裁判記録の当事者欄には法人しか展開されていないため、一覧だけを見ていると落ちる事実です。

原告が主張する侵害は、大きく二つの経路に分かれます。ひとつは取得の経路で、2021年6月にマン氏がアモデイ氏の指示のもとBitTorrentを用いてLibGenから500万部以上を、2022年7月にはPiLiMiからさらに200万部以上を違法にダウンロードした、という構成です。BitTorrentがダウンロードと同時にアップロードを行う以上、複製権だけでなく頒布権も侵害されている、と原告は述べています。

もうひとつは学習と出力の経路です。訴状は、正規ライセンシーのサイトなどから歌詞を収集したこと、第三者データセットから複製を取得したこと、書籍を裁断してスキャンしたこと、それらを用いてClaudeを訓練したこと、そして出力として歌詞をそのまま、あるいはそれに近い形で生成したことを、Anthropicによる直接侵害として列挙しています。

訴因は4つです。第一が、トレントによる直接侵害(全被告に対して)。第二が、トレントについてのアモデイ氏・マン氏に対する寄与侵害。第三が、Anthropicに対する直接侵害。第四が、著作権管理情報の除去・改変です。

求めている救済も具体的です。故意侵害を理由とする法定損害賠償として1著作物あたり最大15万ドル、著作権管理情報の除去・改変について1違反あたり最大2万5000ドル、そして恒久的差止めを請求しています。

そこに、もうひとつ変わった請求が並んでいます。学習データ・学習方法・既知の能力についての会計開示です。どの歌詞で訓練したのかを特定し、収集・複製・処理の方法を開示せよ、という求め方で、金銭賠償とは別に中身を開けさせにいく構成になっています。

先行事件の15億ドルについては、二次報道の記述を採りませんでした。 TechCrunchは先行するBartz事件について「判事の判断を受けて15億ドルの支払いを命じられた」と書いています。しかし訴状本文は、同じ地区の別の裁判所が700万部を超える違法トレントを認定したのち、Anthropicがその集団訴訟を15億ドルで和解した、と記しています。命令と和解では意味が違いますので、訴状の記述を採りました。

対象として訴状が名指しする楽曲には、「Ain't No Mountain High Enough」「All I Want for Christmas is You」「Eye of the Tiger」「Here Comes Santa Claus」「Paper Rings」などが挙がっています。訴状は、書籍経由で取り込まれたとする楽曲を別紙A、学習と出力で複製されたとする楽曲を別紙Bとして整理しています。

原告代理人はOppenheim + Zebrak LLPとPryor Cashman LLPです。同じ北部地区には、8月17日付でRound Hill Music LPによるAnthropicへの訴えも係属しています。

2. キオクシアとサンディスク、2032年までに日本で約5兆円を投資へ——政府支援が前提

キオクシアとサンディスクは8月27日、日本政府からの支援を前提として、2032年までに日本国内で総額約5兆円(310億米ドル超)の投資を見込むと発表しました。

投資の対象は、四日市工場と北上工場における生産設備の構築、関連するインフラ、そして技術の強化です。両社は過去25年間で国内に約9兆円(500億米ドル超)の設備投資を実施してきたと発表文に記しています。金額は円と米ドルの双方が発表文の原文にある数字で、こちらで換算を作ってはいません。

同じ日、キオクシアは北上工場(岩手県北上市)の第3製造棟(K3棟)に向けた土地等の整備を開始したことも公表しました。K3棟は第2製造棟の南側に建設され、2029年度中の稼働開始を目指します。建設時期や生産設備への投資といった詳細な計画は市場動向を踏まえて決めるとしており、この投資についても政府からの支援が前提に置かれています。

前提という言葉は、発表文のなかで繰り返し出てきます。キオクシアの太田裕雄社長は、これまでの政府支援に謝意を示したうえで、今後の国際競争力の維持・強化には「日本政府による継続的かつ戦略的な支援が重要である」と述べています。サンディスクのDavid Goeckeler会長兼最高経営責任者は、この投資が「日米経済協力の象徴的な成功事例」になると確信している、とコメントしました。

背景には、同じ週に並んだ他国の動きがあります。MONOistは、中国YMTCの上場申請が8月21日に上海証券取引所で受理され約7800億円規模の調達が見込まれること、韓国SKハイニックスが8月27日に米インディアナ州でHBM先端パッケージング工場の起工式を開いたことを、あわせて伝えています。

日本政府の成長戦略は、AI・半導体分野の官民投資額について2040年度までに101.6兆円規模という目標を掲げています。この規模の設備を企業の自己資金だけで維持する時代からは離れつつある、というのが3件を並べたときの絵です。

3. AIクラウドのLambda、10億ドルの私募債でNvidia製チップを調達——Microsoftへリース

AIクラウドのLambdaが、Microsoftへリースする予定のNvidia製AIチップの購入資金として、10億ドルの私募短期債を調達したとBloombergが報じました。

以下の数字は、いずれもTechCrunchがBloombergに帰属させて伝えているものです。原報は有料で、こちらでは取得していません。

Bloombergによれば、この短期債はJPモルガン・チェースが組成しました。TechCrunchは、短期の債務でチップを買うという設計自体が、チップを早く稼働させて入ってくる収入で速やかに返せるとLambdaが見込んでいることの表れだ、と読んでいます。

借入は続いています。Lambdaは5月に10億ドルの担保付きクレジットファシリティをクローズし、今週はNvidia向けに提供する契約案件のため、Nvidiaの新しいGPUであるGB300の調達資金として9億2600万ドルの融資をクローズしたと発表しています。

資本の側でも調達が進んでいます。30億ドル規模のプレIPOラウンドを協議中と報じられており、直近の資金調達は2025年11月の15億ドル、ポストマネー評価額は54億3000万ドルです(PitchBookのデータ)。

もっとも、効いてくるのは個別の案件より全体の数字のほうです。Bloombergの集計として、2026年に銀行とテック企業が調達したAI関連の債務は、世界で4000億ドルを超えたと伝えられています。AIインフラの拡大が自己資本ではなく借入で進んでいる構図が、年内の実額として見えてきました。

そのほかの動き

政策・規制

  • オープンソース120プロジェクトのAI方針を調べたレビューによると、37件がAIの支援を受けた貢献を全面的に禁じています。LinuxカーネルはLLMの使用を明示することを条件に許容する一方、GCC・QEMU・SDL・Gentoo・Zig・GhosttyはAI支援の貢献を受け付けず、Codeberg・Sourcehut・FlathubもAIの利用を禁じています。Debianは全面禁止案を含む議案を開発者投票にかけています。 — Why open source projects ban AI(optimizedbyotto.com)

ビジネス

モデル・研究

  • Anthropicのブログが8月26日付で、Warpによる自己改善エージェントの型を紹介しています。内側の基礎スキルがレビューを生成し、外側の改善スキルが定期実行の観察役として基礎スキルへの小さな修正をPRで提案する構成で、スキルが平文のファイルであることを、そのままレビュー可能性に変えています。 — How Warp builds self-improving agents on Claude(Anthropic)
  • 推論エンジンvLLMがv0.28.0を公開しました。270人による584コミットで、Kimi-K3向けの全面的な最適化とDeepSeek V4のsparse MLA対応が柱です。 — vLLM v0.28.0(GitHub)
  • LLMに記憶を持たせようとしたら、結局プログラム解析の問題になっていた、という実装記です。 — Giving an LLM memory turned into program analysis(pwning.systems)

プロダクト

ソース: AIニュースインボックス(2026年8月30日収集・17件、一次1件・二次16件)から編集部が選定しました。