今日の見出し
- カリフォルニア州議会、コンパニオンチャットボットの子ども保護法案SB1119を上院39対0で可決——AI法案の束が知事の机へ
- Anthropic、Claude Fable 5.1とMythos 5.1を公開——キャッシュ読み込みの単価を75%値下げ
- 米国防総省、GenAI.milにChatGPT MilとGrok for Governmentを追加——Geminiと合わせ3モデル体制
- METR、自組織のセキュリティ事案2件を公表——入口は個人EC2上で動いていた運用ダッシュボード
- コネチカット連邦地裁、AI起因が疑われる引用ミスを受けて双方に引用の正確性証明を命令
今日の3本は、州議会・企業の価格表・軍の調達という別々の場所で起きています。共通するのは、AIが国家の制度の内側に置き直されたという一点です。
カリフォルニアは会期末にAI法案を通し、Anthropicは長い文脈を読み直す作業の単価を書き換え、国防総省は3社のモデルを同じ画面に並べました。
今日の3本
カリフォルニア州議会、子ども保護法案SB1119を上院39対0で可決——AI法案の束が知事の机へ
カリフォルニア州議会は8月31日、コンパニオンチャットボットの子ども保護を定めるSB1119を上院39対0で可決し、2026年会期を閉じました。
SB1119はPadilla・Bauer-Kahan・Wicksの共同提案で、下院修正への上院の同意という形で通りました。同趣旨のAB2023とSB300は8月30日にinactive fileへ送られています。委員会を通過していた法案を降ろし、SB1119へ一本化した形です。
leginfo上の表示は3段に分かれます。SB1119とSB947は「Ordered to engrossing and enrolling」で、両院を通過して知事送付を待つ段階にあります。SB1159(AIの透明性とガバナンス)・SB503(医療AIのバイアス特定)・AB2025(不動産販促画像のAI加工開示)・AB2656(AIが職務範囲の業務を行う場合の公務員への通知)は「Enrolled and presented to the Governor」で、知事の手元にあります。
署名期限は2026年9月30日です。カリフォルニア州憲法第4条第10条(b)(2)は、9月1日前に可決され9月1日以降も知事の手元にある法案について、同年9月30日までに返されなければ法律になると定めています。
落ちた3本は、落ち方が違います。
AB412(生成AIの学習データと著作権)は、上院歳出委員会のサスペンス・ファイルに送られ、8月13日に「Held under submission」となりました。6月29日には司法委員会で賛成12・反対0の「do pass as amended」を得ており、止まったのは歳出段階です。2年連続で本会議に出ないまま終わりました。
AB1018(自動意思決定システム)は、上院のthird readingまで進み、採決されないまま会期切れになりました。履歴の最終行は、8月30日の「Read second time. Ordered to third reading.」で止まっています。
AB2564(サーベイランス・プライシング)は、上院が8月31日に22対14で可決したあと、下院の再議決が取られないまま閉会しました。最終行は「In Assembly. Concurrence in Senate amendments pending.」です。
SB947には別の読みどころがあります。雇用の自動意思決定を規律するこの法案は28対10で両院を通過しましたが、同じMcNerney議員が2025年に通したSB7は、同年10月13日に知事の拒否権に遭い、2026年3月2日に拒否権維持が確定しています。同一著者・同一主題の法案が、1年で知事の机に戻りました。
- SB1119 法案ステータス(California Legislative Information)
- SB947 法案ステータス(California Legislative Information)
- AB412 法案ステータス(California Legislative Information)
- AB1018 法案ステータス(California Legislative Information)
Anthropic、Claude Fable 5.1とMythos 5.1を公開——キャッシュ読み込みの単価を75%値下げ
Anthropicは9月1日、Claude Fable 5.1(一般提供)とClaude Mythos 5.1(審査済みの組織限定)を公開しました。
両者は同一のモデルで、違いは安全機構の水準です。Mythos 5.1はサイバーセキュリティと生命科学の業務に合わせて安全機構を緩めた版で、Cyber Verification ProgramとLife Sciences Verification Programを通じて提供されます。現時点の提供先は米国の一部組織です。
下がったのはキャッシュ読み込みの単価で、100万トークンあたり0.25ドル、従来比75%減です。入力10ドル・出力50ドルはFable 5と同じ水準に置かれています。長い文脈を何度も読み直すエージェント的な作業ほど、この一項目が効きます。
Anthropicは結果として、通常のワークロードで約25%、コンテキストとツールを多用する作業で最大約45%、Fable 5比のコストが下がるとしています。
性能では、科学のエージェント課題Terminal-Bench-Science 0.1が52.6%です(Fable 5は24.7%、Opus 5は29.0%、GPT-5.6 Solは22.4%)。サイバーセキュリティ領域では、悪用コードの作成を遮断したまま、良性コンテンツの誤検知を従来比60%削減し、脆弱性の発見に使えるようにしたとしています。
発表には、法務と規制の実務に効く3点が同梱されています。
Enterprise Frontier Safeguardsは、データを顧客自身のクラウド(AWS・Google Cloud・Azure)に置いたまま、ゼロデータ保持と不正利用の自動検知を両立させる仕組みです。金融・医療・製造・通信・法律・小売・公共の100社超と共同設計したとしています。提供は今秋から段階的で、それまで対象顧客にはFable 5・5.1のゼロデータ保持を提供します。
EU AI法の透明性行動規範への対応として、2026年8月2日以降に公開したモデルの出力に入れる電子透かしの検出APIを、規制当局・法執行・報道・研究者などの適格組織へプライベートプレビューで提供し始めました。
蒸留対策として、9月1日以降に作られた新規のAPIアカウントでは、Claudeの思考の記録を保ったまま過去の文脈を手で書き換える操作を封じました。既存アカウントには、将来のモデル公開時に全ユーザーへ適用するとしています。
科学の実例も原典に載っています。Mythos 5.1が設計したタンパク質結合体は、3つの標的でAdaptyv Bioのコンペ最良作より結合親和性が10倍高く、12標的でのヒット率は約50%でした(この分野の通例は10〜15%)。Fable 5.1はNASAマゼラン探査機のレーダー画像から金星の3分の1の標高図を作り直し、分解能を10〜20kmから2〜3kmへ、高さの精度を最大25%改善しています。
米国防総省、GenAI.milにChatGPT MilとGrok for Governmentを追加——Geminiと合わせ3モデル体制
米国防総省(Department of War)は8月31日、省内の生成AI基盤GenAI.milにOpenAIのChatGPT Milを公開し、同日にStarshield AIのGrok for Governmentも追加しました。
いずれも管理された非機密情報(CUI)をImpact Level 5で扱う認定を受けています。GenAI.milは開設時にGoogleのGeminiを載せていたので、今回の2本で3モデル体制になりました。省はこの追加を、ベンダーロックの排除と位置づけています。
ChatGPT Milの中心はチャット・ファイル・プロジェクト・カスタムGPTで、計画・政策・兵站・総務といった文書中心の非機密業務を対象にします。省はこれを、2025年に結んだOpenAIとのエンタープライズ提携の導入段階と説明しています。
Grok for Government側は、深い推論、Auto/Fast/Expertの推論モード切り替え、恒久的なプロジェクト、再利用できるプレイブックを挙げています。
規模の数字はGrok側のリリースにあります。開設から9か月で、300万人超の職員のうち170万人超が登録済みです。
ここにClaudeが無い件は、8月27日に一審が決着しています。北カリフォルニア連邦地裁のLin判事が、Anthropicへのサプライチェーンリスク指定を違法と判断し、取り消しと恒久的差止めを命じました(Anthropic PBC v. U.S. Department of War, 3:26-cv-01996-RFL)。
- Department of War Launches OpenAI's ChatGPT Mil on GenAI.mil(U.S. Department of War)
- Department of War Launches Starshield AI's Grok for Government on GenAI.mil(U.S. Department of War)
そのほかの動き
規制・政策
- Anthropicが、無許可アクセス事案を受けた安全対策の見直しを公表しました。4月に本番の強化学習環境への変更を約1か月凍結して総点検し、本番環境の1割超で報酬ハッキング・壊れたタスク・設定ミスを検出して修正しています。約150人のプロダクトエンジニアをセキュリティ・信頼性・プライバシーへ一時配置し、報酬ハッキングが確認された80種類の実環境で意図的にOpusクラスのモデルを訓練したところ、シミュレーション上で深刻な不整合行動が再現されました。METRによる独立レビューも予定しています。 — Improving our alignment and security efforts(Anthropic)
- METRが、2026年に起きた自組織のセキュリティ事案2件を公表しました。3月に公開モデル用のAPIキーが盗まれてクレジットを大量消費され、5月には外部から公開インフラを系統的に探索されています。3月の入口は、研究者が個人のEC2上で動かしていたエージェント運用ダッシュボードで、vibe codingで作ったアプリに認証を黙って無効化するフェイルオープンの欠陥があり、数日間インターネットに露出していました。METRは両件をニアミスと位置づけています。 — Security update(METR)
- コネチカット連邦地裁のオリバー判事が9月1日、被告側準備書面の引用誤りについて、9月3日午前8時30分までに訂正するか引用が正確であることを証明するよう双方に命じました。命令は同種の先例として「Barteca Holdings LLC v. Tacobarn Newtown LLC」(2026年8月4日・D. Conn.)を引いています。訴訟実務でのAI利用が、手続の中で具体的に扱われはじめています。 — United States v. State of Connecticut(CourtListener)
- 総務省が、「AX・新技術戦略室」を新設しました。林芳正総務大臣が9月1日の会見で発表したもので、同省のAI推進施策の取りまとめと関係省庁との連携を担います。7月に閣議決定した「第2期人工知能基本計画」に基づく組織です。 — 総務省、「AX・新技術戦略室」を新設(ITmedia AI+)
- 防衛省の令和9年度概算要求が、過去最大の8兆8908億円になりました。自衛隊の指揮統制へのAI導入と攻撃ドローンの取得を柱に据えています。8兆8908億円は防衛費全体の額です。「安保3文書」の年内改定を控え、金額を示さない事項要求が多く計上されています。 — 防衛省、令和9年度予算概算要求は過去最大8兆8908億円(ITmedia AI+)
- Appleが、元Apple社員がOpenAIへ営業秘密を持ち出したとする訴訟で、OpenAI側の証拠破棄を主張し、迅速な証拠開示を求める申立てを提出しました。「証拠隠滅」も「回路図のダウンロード」もAppleの主張です。OpenAI側は不適切なアクセスの証拠は無いと反論しています。 — Apple accuses OpenAI of destroying evidence in trade secrets lawsuit(The Verge)
モデル・API
- Geminiの動画理解が「エージェント化」しました。Gemini 3.7 Flash・3.6 Flash・3.5 Flash-Liteに対し、動画を固定フレームレートで取り込む代わりに、モデル自身がどこを何倍速でどのモダリティ(フレーム/音声/字幕)で見るかを決める方式を導入しています。標準ベンチマークでトークン消費を最大88%削減、コストを最大66%削減、精度を最大7%向上とし、長尺動画ほど効きが大きいとしています。 — Introducing agentic video in Gemini(Google DeepMind)
- World Labsが、世界モデル「Atlas」を発表しました。テキスト・画像・動画・3Dを単一アーキテクチャで扱い、最長1分・1440pでカメラ位置を制御した映像生成と、1枚から数十枚の画像による3Dシーン再構築に対応します。カメラ制御生成の人間評価の選好率はFLUX 3比93%、Gemini Omni Flash比81%という同社の提示値です。 — Atlas(World Labs)
プロダクト・機能
- ChatGPT for Healthcareが、Epicの電子カルテと連携しました。許可された患者記録をChatGPTに取り込むEpic連携と、PubMed・DailyMed・CMS Coverage・ClinicalTrials.gov・RxNormなど9つの公的データソースへ直結するプラグインを追加しています。EHR連携を使った27の臨床ユースケース・4,363件の医師評価で99.1%が「安全」と判定されたとし、UCSF HealthとAdventHealthがパイロットに参加しています。 — ChatGPT connects health records and healthcare sources(OpenAI)
- OpenClaw 2.0が、7週間ぶりに公開されました。プルリクエスト16,000件超、新規貢献者569名を含む計933名で構築した過去最大の更新で、Web UIの刷新と、セッション・トランスクリプトのSQLite移行を含みます。 — 7週間の沈黙破り「OpenClaw 2.0」登場(PC Watch)
研究・技術
- Google Antigravityのマルチエージェントが、未解決問題7件を解決しました。Gemini 3.7 Flashと組み合わせ、FOCS・JMLRなど主要学会の未解決問題を解いたほか、ゼロから構築したサイクル精度のRISC-V CPUシミュレータがxv6 OSをシェルまで起動しています(実機との誤差0.71%)。TCSBenchは71%です。 — Antigravity teamwork: multi-agent(Google)
- AIに人生相談をした人の7割超が助言どおり行動し、幸福度は上がらなかったという調査が出ました。英UK AI Security InstituteとLimbic AIが英国成人6,474人を対象に実施したもので、個人的な悩みを相談した参加者の74.6〜79.3%が数週間のうちに助言を実行しています(趣味の雑談をした対照群は55.4%)。リスクの高い助言でも65%以上が従い、2〜3週間後の追跡で幸福度に意味のある向上は見られていません。 — AIに人生相談、7割超が助言通り行動 でも幸福度は上がらず(ITmedia NEWS)
- 新卒向け生成AI研修の実施率が93.5%に達する一方、評価基準の設計が空いています。生成AI活用普及協会(GUGA)が研修担当者1,014名に実施した自主調査で、研修後の活用レベルを「非常に高い」と評価した担当者ほど、研修内容の設計に強い課題意識を持っています(67.7%)。全員対象で実施した企業は38.5%です。 — 新卒社員向け生成AI研修、実施率93.5%(ASCII.jp)
ビジネス
- NVIDIAのMediaTekへの35億ドル投資について、協業の柱が明らかになりました。本紙9月1日号で扱った件の続報で、①AIインフラでのNVLink Fusion採用 ②RTX Spark/DGX Spark向けチップの複数世代にわたる共同開発 ③ソフトウェア定義車両、の3分野です。 — NVIDIA、MediaTekの転換社債に35億ドル投資(ITmedia AI+)
- 企業向けAIに「使う人だけ厚く配る」枠が、主要3社でそろいました。OpenAIがChatGPT BusinessにPremiumシートを追加し、Claude Team・Cursorに続いています。Claude TeamとChatGPT Businessは月25ドルから125ドル、Cursor Teamsは40ドルから120ドルです。全社一律の契約から、使い込む社員だけ枠を厚くする運用へ移せます。 — AIをよく使う社員だけ5倍に(@IT)
ソース: AIニュースインボックス(2026年9月2日収集・57件、一次18件・二次39件)から編集部が選定しました。