今日の見出し

  • 米司法省、OpenAI著作権MDLへ合衆国の利害関係陳述書を提出——著作物によるLLM学習は侵害に当たらないと主張
  • OpenAI、新モデル「Astra」がサイバー能力で自社基準の最上位「重大」に到達——この水準の指定は初
  • Google、「Gemini 3.8 Flash」と防御特化の「3.8 Flash Cyber」を公開——6週間で3世代目のFlash
  • OpenAIがタンブラーリッジ事件の7件をカナダへ移すよう申立て、同じ日に原告側は新たに30件を提訴
  • ニューヨーク市、幼稚園から8年生までの生成AI利用を1年間禁止

今日の3本は、司法省の書面、モデルの能力評価、防御に特化したモデルという別々の場所から出ています。

貫いているのはサイバーです。政府が学習の適法性に踏み込み、攻撃能力が自社基準の最上位に達し、守る側の道具が同じ週に出そろいました。

今日の3本

米司法省、OpenAI著作権MDLへ合衆国の利害関係陳述書を提出——著作物によるLLM学習は侵害に当たらないと主張

米司法省は9月1日、ニューヨーク南部地区連邦地裁に係属するOpenAI著作権侵害訴訟へ、全20ページの合衆国の利害関係陳述書を提出しました。

根拠は28 U.S.C. §517です。この条文で出す書面は裁判所の許可を要さず、提出期限の定めもありません。表題は「Statement of Interest of the United States」です。

書面の頭には「This Document Relates To: All Matters」と打たれています。統合された広域係属事件(In re: OpenAI, Inc., Copyright Infringement Litigation, No. 25-md-3143 (SHS)(OTW))の係属中の全事件に宛てたもので、ファイルスタンプは9月1日です。

主張の骨格は、フェアユースの第4要素——著作物の潜在的市場または価値への影響——が強くフェアユースを支持する、というものです。学習という用途の変容性が、市場への影響を上回ると論じています。

書面はさらに、ライセンスを義務づけた場合の帰結に踏み込みます。対価を払えるのは資本力のある最大手だけになり、LLM学習の寡占を生むうえ、レガシーメディアへの実質的な補助金として機能する、という組み立てです。

ライセンス市場を設けること自体の当否については、合衆国は脚注13で立場を留保しています。

署名は司法次官のStanley E. Woodward Jr.、民事局担当司法次官補のBrett Shumate、上級顧問のMichael Weisbuchです。

日本の法務にとっての読みどころは、この書面が統合MDL全体に向けて出ている点にあります。米国で学習データを調達するときの法的前提に、行政府の公式見解が1枚加わりました。

OpenAI、新モデル「Astra」がサイバー能力で自社基準の最上位「重大」に到達——この水準の指定は初

OpenAIは9月1日、近く公開する新モデル「Astra」が自社のPreparedness Frameworkのサイバーセキュリティ能力で最上位の「重大(Critical)」閾値を満たしたと公表しました。

同社の定義では、Criticalは次のいずれかを満たす場合を指します。堅牢化された多数の実システムに対して、人の介入なくあらゆる深刻度のゼロデイを特定し実用的なエクスプロイトを開発できること。あるいは、高レベルの目標だけを与えられて、堅牢化された標的への新規のサイバー攻撃戦略を端から端まで立案・実行できることです。

評価の具体は4点あります。

既知の脆弱性からのエクスプロイト開発を測るExploitBenchで100%を記録しました。汚染を避けるため内製した「ExploitBench - Internal Port (June–August 2026)」は、より新しく開示されたV8の高深刻度脆弱性20件で構成されており、AstraはGPT-5.6 Solよりはるかに少ない出力トークンで高い任意コード実行率を示しています。

評価の途中では、未知の脆弱性2件を自ら発見し、エクスプロイトチェーンの一部として実際に使用しました。2件はメンテナへの開示手続き中です。

堅牢化されたブラウザに対しては、HTMLファイルを開かせるだけでサンドボックスを脱出し、ホスト上でコマンドを実行する完全な侵害チェーンを構築しています。

サイバー系のジェイルブレイク評価では、拒否率が91.5%でした。GPT-5.6 Solは59%です。

Hugging Faceの事案との関係も原典に書かれています。Astra自身は事案に関与しておらず、同社は事案後に一部のフロンティア学習を2週間停止して学習基盤を強化し、8月28日に停止していた大規模な強化学習のランを再開しました。

高度なサイバー能力へのアクセスは当面テスターに限定され、その後Daybreak Blue経由で防御用途へ広げる予定です。

ここに挙げた数字は、いずれもOpenAIの自社評価によるものです。

Google、「Gemini 3.8 Flash」と防御特化の「3.8 Flash Cyber」を公開——6週間で3世代目のFlash

Google DeepMindは9月2日、Gemini 3.8 FlashとGemini 3.8 Flash Cyberを公開しました。

3週間前の3.7 Flashに続くリリースで、6週間で3回目のFlashになります。

価格は3.7 Flashと同じ導入価格で、100万トークンあたり入力0.75ドル・出力3.75ドルです。この導入価格は2026年12月31日で終了し、2027年1月1日から入力1.50ドル・出力7.50ドルになります(脚注1)。

汎用側の性能は、複雑な推論を測るHLE-Verifiedで54.9%です。Vals Finance Agent V2とHarvey's Legal Agent Benchmarkでも3.7 Flashを上回るとしています。

Cyber版の数字は4つあります。

20のプログラミング言語にまたがる内製ベンチマークで、脆弱性発見の成功率が70%を超えました。

外部ベンチマークのCWE-Bench(Collinear運営)では、パッチ生成のpass@1が47.2%です。主要フロンティアモデルの47.8%に対し、大幅に低いコストでほぼ同等という位置づけになります。

Chrome Securityチームの評価では、はるかに大きい商用モデルの2.6倍の正しいパッチを生成しました。

Wizの社内ペネトレーションテストベンチマークでは、他の主要フロンティアモデル比で再現率が7.5〜9.7ポイント高く、コストは2.3〜5.2分の1でした。

Cyber版の提供は、同日開始の限定プログラムFairwind経由に限られます。対象は政府機関・重要インフラ事業者・ソフトウェア保守者で、すでに世界650社超が参加しています。参加組織には、アクセスを社内のセキュリティ・インシデント対応・侵入テストの各部門の従業員に限る運用基準が課されます。

あわせてGoogleは、Google.orgを通じたサイバーセキュリティ資金の累計が全世界で1億ドルを超えたと公表しました。同時公開の2026年版US Cybersecurity Impact Reportによれば、これまでに35のサイバークリニックへ3600万ドルを拠出し、米国内の病院・公立学区・自治体系公益事業1250超を無償で支援しています。

そのほかの動き

規制・政策

  • タンブラーリッジ銃乱射事件を巡る訴訟が、同じ9月2日に両方向へ動きました。OpenAIとサム・アルトマン氏は、4月にカリフォルニア州北部地区連邦地裁へ提起された7件について、フォーラム・ノン・コンビニエンス(不便宜法廷地)を理由とする全27ページの却下申立てを提出しています。担当はJacqueline S. Corley判事、審尋期日は10月8日、反対書面は9月16日、再反論は9月23日が期限です。 — M.G. v. Altman ECF No. 31(CourtListener)
  • 同じ日、原告側代理人のEdelson PCが新たに30件の訴状を提出しました。4月の7件に続くもので、新たな原告には校内にいたものの銃撃を受けなかった教員・校長・生徒が含まれます。訴因は過失にとどまらず、初めて幇助(aiding and abetting)を掲げています。 — OpenAI faces 30 more lawsuits tied to Tumbler Ridge shooting(TechCrunch)
  • ニューヨーク市の公立学校が、幼稚園から8年生までの生徒による生成AIツールの利用を1年間禁止します。対話型AIキャラクター(コンパニオンチャットボット)は全学年で禁止とし、高校生には年2回のAIリテラシー講座を導入します。全米最大規模の学区の措置です。 — NYC bans AI chatbots for students below high school(The Verge)
  • 中国の中央網信弁(CAC)が、「清朗・AI応用の乱れの整治」特別行動の第2段階に着手しました。重点対象はAIによる虚偽情報の作成・発信、暴力的で低俗なコンテンツ、他人の顔や声を用いたなりすまし、未成年者の権益侵害です。累計の実績として、違法・不良情報561万件超の削除、アカウント4.9万件超の処分、違反サイト・アプリ等2400件超の処置を挙げています。生成AI側には原始コーパスの審査と生成物への標識付与の徹底が求められました。 — 中央網信弁「清朗・AI応用乱象整治」第2段階(中国国家インターネット情報弁公室)
  • テキサス州北部地区連邦地裁の連邦治安判事が、移民関連訴訟の予審管理を受任するにあたり、「人工知能の使用に関する常置命令」を発令しました。当事者・代理人による生成AI利用に裁判所が個別に条件を課す運用が、米連邦地裁で広がっています。 — Perez-Maxia v. DHS, Standing Order Regarding Use of Artificial Intelligence(CourtListener)
  • 米政府がAIモデルの安全性テストの枠組みを非公開のまま策定したと報じられています。どの企業が既に審査を受けたか、運用の開始時期も公表されていません。情報公開請求を通じて開示が迫られる可能性が指摘されています。 — Trump may be forced to reveal secret rules feds use for AI safety testing(Ars Technica)
  • Astraについては、研究者から監視のしやすさを懸念する声が出ています。思考過程の可視性が他の最先端モデルより低く、安全確保の手段として思考過程の監視への依存度が高まっている、という指摘です。 — Researchers raise safety concerns ahead of OpenAI's Astra(The Verge)

モデル・API

  • アリババが、旗艦モデルの更新版qwen3.8-max-0902を投入しました。コンテキスト長は100万トークン(最大入力991,808・最大出力131,072)で、国際リージョンの価格は100万トークンあたり入力2ドル・出力6ドルです。日付入りエイリアスはqwen3.8-max-2026-09-02です。 — Qwen3.8-Max(Alibaba Cloud Model Studio)
  • Metaが、Muse Spark 1.3を公開しました。複数ステップのタスクを継続するエージェント機能とコーディング性能を強化した版で、同社エンジニアの比較では前モデルの1.2に比べてツール呼び出し回数が約20%、消費トークン数が約25%減っています。 — Introducing Muse Spark 1.3(Meta AI Research)
  • Metaが、初のリアルタイム音声認識モデルMuse Voice Transcribeの提供を始めました。20人を超える会議参加者の話者識別と、一つの会話内での多言語混在に対応します。 — Meta、リアルタイム音声認識「Muse Voice Transcribe」提供開始(ITmedia AI+)

プロダクト・機能

研究・技術

  • Epoch AIが、能力フロンティアの前進速度を独自指標Epoch Capabilities Index(ECI)で測った分析を公開しました。o1-previewとo1-miniの登場した2024年9月以降は年14ポイントの直線的な前進で、推論モデル以前の年6ポイントに対して2倍を超えるペースです。 — The frontier of AI capabilities(Epoch AI)
  • 機械生成の「ベスト◯◯」ページが、AI検索の情報源として引用されている実態が調査で示されました。wifitalents.com、worldmetrics.org、gitnux.orgの3サイトが合計21万5128本を公開しており、Perplexityのsonar・sonar-proに380のソフトウェアカテゴリーを尋ねた際の引用7534件のうち、59.8%がウェブトラフィック順位10万位以下のドメインを指していました。3サイトは2023年12月から2024年5月の間に同じ登録代行業者を通じて登録されています。 — Manufactured sources behind AI recommendations(Trellner)

ビジネス

  • NVIDIAとCrowdStrikeが、Fal.Con 2026でエージェント型セキュリティ基盤CrowdStrike SafeMindを発表しました。攻撃側と防御側のAIが互いに挑み合って強化し合う「共進化ループ」を核に据えています。防御側モデルのBlue SolanoはNVIDIA Nemotron 3 SuperをCrowdStrikeの脅威データで追加学習したもので、主要フロンティアモデルを上回る精度を99%低いコストで達成したというのはCrowdStrikeの社内評価です。同社はあわせて、AIを用いた攻撃が過去1年で89%増え、eCrimeの最速ブレイクアウト時間が27秒に達したとしています。 — NVIDIA and CrowdStrike at Fal.Con 2026(NVIDIA)
  • NECが、Claude Mythos Previewをソフトウェア開発・システム運用・脆弱性管理といった社内業務に使うと発表しました。あわせてAnthropicの承認パートナーのみが参加できる枠組みProject Glasswingに参画しています。同枠組みにはGoogleやMicrosoftを含む200社以上が加わっています。 — NEC、「Claude Mythos」をサイバーセキュリティ業務に活用(ITmedia AI+)
  • SB Energyが、米国でのIPOに向けてSECへS-1登録届出書を提出しました。ソフトバンクとOpenAIが戦略投資家かつ賃借人であること、NVIDIAがPORTS-Pikeキャンパスの戦略投資家であり残存価値保証人でもあることが明記されています。契約済のデータセンター・ポートフォリオは8.8 GW-ITで、稼働容量は現時点でゼロです。バックログは約4390億ドルとされますが、届出書自身が「経営陣の仮定に基づく仮想的な見積り」と断っています。 — SB Energy, Inc. Form S-1(U.S. SEC EDGAR)
  • AIセキュリティのHiddenLayerが、デルタ-v・キャピタル主導のシリーズBで1億ドルを調達しました。年間経常収益は過去1年で10倍超に伸びて数千万ドル規模に達し、成長の9割超が新規顧客によるものです。国防総省や情報機関との契約に加え、週間利用者7億人超を抱える大手AIモデル提供企業も顧客に含まれるとしています。 — HiddenLayer nabs $100M(TechCrunch)
  • AIエージェント統合基盤のWonderfulが、インサイト・パートナーズ主導のシリーズCで5億5000万ドルを調達し、評価額を半年足らずで20億ドルから50億ドルへ引き上げました。セールスフォースが新規出資者として初参加しています。 — Wonderful more than doubles its valuation to $5B(TechCrunch)
  • Googleが、MN8 EnergyおよびEos Energy Enterprisesと西バージニア州のPJM系統上で電源プロジェクトを立ち上げました。太陽光に、短時間稼働のリチウムイオン電池と長時間稼働の亜鉛ハイブリッド電池を組み合わせ、計画中のGoogle施設へ24時間体制のクリーン電力を供給します。ペンシルベニア州製の亜鉛ハイブリッド電池としては初の実運用導入です。 — Long-duration energy storage in West Virginia(Google)

組織・人材

ソース: AIニュースインボックス(2026年9月3日収集・67件、一次18件・二次49件)から編集部が選定しました。