今日の見出し
- OpenAIが未公開の社内モデルによるナビエ–ストークス方程式の証明を公開——Leanによる形式化も同時に出す
- NYUのバックマスター教授がOpenAIの公表の進め方を批判——Anthropicのアルピョゲ氏と共同で外力ありのオイラー方程式の証明を発表
- Metaが個人向けAIエージェント「Muse」を米国で提供開始——専用の仮想マシンと承認役のSentinelを組み合わせる設計
- AnthropicがClaude「Max」の「5倍」「20倍」という利用量表示を巡り拡大集団訴訟を起こされる
- Google DeepMindがヒトゲノムの1塩基置換90億通りの影響を予測した「AlphaGenome Atlas」を公開
90年ほど未解決だった流体の問題に、機械が答えを出しました。OpenAIは論文とLeanによる形式化を同じ日に公開し、懸賞金は請求しない意思を示しています。
代理と表示の話も並びます。Metaは人の代わりに手を動かすエージェントを米国で配り始め、Anthropicは利用量の表示を巡って米国で提訴されました。
今日の3本
OpenAIが未公開モデルによるナビエ–ストークス方程式の証明を公開
OpenAIは9月8日、社内の未公開モデルが導いたとして、ナビエ–ストークス方程式が有限時間で特異点に至ることを示す証明と、Leanによる形式化を公開しました。
示されたのは、静止した状態から始まるなめらかな流体が、なめらかな外力を受けながら有限のエネルギーを保ったまま、有限の時間で速度が際限なく大きくなる状態へ至るという内容です。OpenAIはこれを、クレイ数学研究所による公式定式化の主張「C」(および「D」)を立てるものと位置づけています。解は内側へ巻き込みながら細長く伸びる渦で、中心の領域は縮みながら速度を上げ、それでもエネルギーは有限にとどまります。
使ったのは、GPT-6 Astraより大幅に能力が高いという社内モデルです。8月28日から学習を続けている途中の版で、9月1日にミレニアム懸賞問題のうち2つが解かれたという噂を聞いたことをきっかけに、同社は未解決の全問題へエージェントを投入しました。ナビエ–ストークスの解に到達したグループは1万体規模の同時実行で、最初の起動から約88時間後の9月5日に答えを出しています。Leanでの形式化と検証には、GPT-6 Astraがさらに17時間かかりました。
規模の数字も公開されています。全問題を通じてエージェントが送ったメッセージは490万件、出力トークンは約3000億で、ナビエ–ストークスに限ると270万件と約1300億でした。
粘性の項を落としたオイラー方程式についても、同社のエージェントは同じ種類の破綻を示しました。こちらが解いたのは外力を加えない版で、約100体のエージェントが約50時間かけて証明を作っています。
公表の進め方には、当事者から批判が出ています。NYUの数学教授トリスタン・バックマスター氏は9月8日、Anthropicの数学者レベント・アルピョゲ氏と共同で3本の証明を発表し、その声明のなかで、自分たちの進捗に関する情報が公表前にOpenAIへ渡ったと述べました。両氏が選んでいたのは、なめらかな外力を通じてクレイの問題へ向かう経路——定式化のCとD——で、バックマスター氏は「ほかに取り組んでいる人をほとんど知らない」と書き、問題文をモデルに渡して数日でたどり着ける方向とは別だと述べています。
やり取りの中身についても、同氏は具体的に書きました。OpenAIのブベック氏からアルピョゲ氏のクレジットを外すよう求められ、公表を押し通そうとしたときに「なぜ自分のキャリアを台無しにするのか」と言われた、と述べています。
OpenAIは、両氏の成果を公開前にいかなる形でも見ていないとしたうえで、外力ありのオイラー方程式について両氏の優先権を認めると書きました。着手が9月1日である点と、両氏との連絡を取った経緯は、同社の記事も認めています。
- On the Navier–Stokes Millennium Prize Problem(OpenAI)
- OpenAI fought dirty on career-making math problem, says NYU mathematician(TechCrunch)
Metaが個人向けAIエージェント「Muse」を米国で提供開始
Metaは9月8日、人の代わりに作業を進める個人向けAIエージェント「Muse」を発表し、米国でiOS・Android・muse.aiから提供を始めました。
Museはメールの送信や旅行の予約といった作業を受け取り、目標を渡せば計画を立てて自分で進めます。ブラウザを開いてフォームを埋め、交渉も代行します。アプリを閉じたあとも作業を続け、状況が変わったときや承認が要るときに戻ってきます。動かしているのは、Metaが自社で最も能力が高いとするモデルのMuse Sparkで、対話はMuseアプリとWhatsAppの両方から行えます。
発表の中心は権限の設計です。MuseはMuse Secure VMという専用の仮想マシン上で動き、利用者がつないだサービスの資格情報もそこに保管されます。同じマシンの上ではシステムのレベルで隔離されたSentinelエージェントが動き、Museの通信はSentinelが承認した範囲だけがインターネットへ出ます。Museはパスワードや決済手段そのものを見ずに資格情報を使い、行った作業と予定している作業の監査証跡を利用者に示します。
利用者側の操作も明示されています。接続するアプリと与える権限の範囲は利用者が選び、メールなら読むだけか送信まで許すかを分けられます。学習への利用は拒否でき、覚えた内容を個別に忘れさせることもできます。
支払いはStripeが用意したLinkに対応し、使い捨てのカード番号を発行します。年内には、利用者だけが鍵を持つMuse Confidential VMを投入する予定です。AIグラス対応は今後の予定として示されました。
- Introducing Muse: The World's First Personal AI Agent Built for Everyone(Meta Newsroom)
- Meta debuts its Muse AI agent. Will consumers trust it?(TechCrunch)
AnthropicがClaude「Max」の利用量表示を巡り拡大集団訴訟を起こされる
Claudeの上位プラン「Max」の利用者らが9月8日、利用量の表示が消費者に誤認を与えるとして、Anthropicを相手取る拡大集団訴訟を起こしました。
争点はProプランとの倍率です。Maxは月20ドルのProに対する上位プランで、月100ドルで「5倍」、月200ドルで「20倍」の利用枠をうたっています。訴状は、この倍率が5時間ごとの枠について約束されたもので、さらに週間の上限が重なるため、実際に使える量の増加はずっと小さくなると主張しています。
代理人は、元連邦取引委員会(FTC)のモニカ・バカ氏とキャティ・ダファン氏です。両氏の同委員会での在職年数は合わせて38年で、バカ氏は「虚偽広告には長い判例の蓄積があります。これは商業的言論で、製品を売るときに嘘をつくことはできません」と語りました。訴えは7月に一度提起され、取り下げたうえで拡大集団訴訟として出し直されています。
先の訴訟に対する却下申立てで、Anthropicは購入手続きのなかにあるリンクをたどれば条件を確認できたとして、これを「製品を裏返して裏面のラベルを読むデジタル版」だと述べました。バカ氏の反論は手順の長さです。「session」という語にたどり着くには2つのリンクをたどる必要があり、その語の意味を知るにはProプランのページへ移らなければならない、と説明しています。Anthropicは取材に回答していません。
時系列も訴訟の材料になっています。Maxプランの発表は2025年4月で、訴えが問題にしている週間の上限が入ったのは、OpenAIとの競争が強まった同年8月でした。
そのほかの動き
モデル
- OpenAIが9月8日、画像生成モデル「ChatGPT Images 2.5」の提供を始めました。細部の描写と編集の精度を上げた版で、APIにはGPT-Image-2.5 FlareとSunburstの2モデルが加わります。同社によると、ChatGPT ImagesとAPIのGPT-Imageモデルで作られる画像は週30億枚を超えています。 Introducing ChatGPT Images 2.5(OpenAI)
- Googleが天気予報モデルを刷新しました。衛星の生データをより多く取り込む構成に変え、予報の精度が上がったとしています。 Google's AI weather model now uses more raw satellite data(Ars Technica)
研究
- Google DeepMindが「AlphaGenome Atlas」を公開しました。ヒトゲノムで起こりうる1塩基の置き換え90億通りについて、分子レベルの影響を予測したカタログで、学術研究向けに無償で提供されます。 AlphaGenome Atlas: a predictive map of every possible DNA letter change in the human genome(Google DeepMind)
政策・訴訟
- OpenAIが、AIと10代の発達に関する研究へ500万ドルの助成金を出すと発表しました。 Teen development research grants(OpenAI)
- Chromeが更新の間隔を2週間に短縮しました。AIによってセキュリティを取り巻く状況が変わったことを理由に挙げています。 Chrome is now shipping updates every 2 weeks as AI changes the security landscape(TechCrunch)
- FacebookとInstagramの広告面に、実在の少女の写真を使った「ヌード化」アプリの広告が配信されていたと、Ars Technicaが調査を報じました。 Real photos of young girls were in nudify app ads on Facebook, Instagram(Ars Technica)
ビジネス
- Google CloudがAccentureと組み、企業へのAI導入を支援する新しい組織を立ち上げました。エンタープライズ市場での追い上げを狙う動きです。 Google Cloud races to catch up in the AI deployment wars with Accenture deal(TechCrunch)
- 1Passwordが、Codexの導入でエンジニアの生産性が21%上がったと発表しました。 1Password(OpenAI)
- ミズーリ州とGoogleが、AIの教育と職業訓練で州全域を対象とする提携を結びました。 Missouri state education partnership(Google)
ソース: AIニュースインボックス(2026年9月9日収集・29件、一次19件・二次10件)から編集部が選定しました。