今日の見出し
- ニューメキシコ州最高裁が、ChatGPTの架空証言を準備書面に引用した弁護士を直接法廷侮辱と認定——制裁金5,000ドルと同裁判所への出廷禁止
- Amazon AdsがOpenAIと提携——Amazon DSPの広告主がChatGPTの会話内の広告枠を買えるパイロットを米国で開始
- OpenAIが、毎秒7,000万リクエストを引き受ける社内ストレージ基盤「Habitat」の内部を公開
- Anthropicが脅威インテリジェンス報告(9月版)を公表——生物兵器につながりうる研究での利用を複数回阻止、中国発の蒸留キャンペーンは5件
- Sakana AIが、新モデル「Fugu Ultra v2」はDeepSWEでGPT-6 AstraとClaude Fable 5.1を上回ると自社発表
ニューメキシコ州最高裁が科したのは、弁護士個人への直接法廷侮辱です。ChatGPTに公判記録を要約させ、その出力を確かめないまま準備書面に署名して提出したことが、制裁金5,000ドルと出廷禁止に直結しました。
残る2本は、対話の画面の使われ方です。Amazonは自社の広告主にChatGPTの会話内の枠を売り、OpenAIは週10億人分の読み書きを受け止める保管庫の設計を公開しました。
今日の3本
ニューメキシコ州最高裁がChatGPTの架空証言を引用した弁護士を直接法廷侮辱と認定
ニューメキシコ州最高裁が、ChatGPTの生成した架空の証言を準備書面に引用した弁護士スティーブン・アーロンズ氏を、直接法廷侮辱と認定しました。
書面に載っていたのは、実在しない証人の証言です。命令は、オフィサー・ミシェル・アマリロ、オフィサー・サンチェス、マナル・アル=ジブリー、テレサ・マルケスの4名を「まるごと捏造された証人」と名指しし、その4名の証言が書面に記載されていたと認定しました。
実在する証人の証言も虚偽でした。ダニー・スタントン氏が脅迫を受けたとする証言、リンダ・スタントン氏が夫の受けた脅迫について述べたとする証言、マライア・チャベス氏とテレサ・マルケス氏が射手の服装と外見について述べたとする証言が、いずれも虚偽だと認定されています。
引用された判例のほうは実在します。命令が認定したのは、State v. Lopez(2005-NMSC-018)とState v. Manus(1979-NMSC-035)の判示を誤って示した点です。8月21日の審問でシャノン・ベーコン裁判官は、実在する判例を不正確に説明することと架空の判例を引用することのあいだに「実質的な違いはない」と述べ、裁判所に対する誠実義務は「同じ強さで」働くと指摘しました。
経緯は審問で本人が説明しています。公判の音声から起こした反訳書に加えて、記録・争点整理書・開示資料の一部をChatGPTに読み込ませたところ、架空の引用が出力されました。使ったのはo3モデルで動くChatGPTで、「弾を通さない要約が出てきたと思い込んだ」と述べています。
命令は2つの自白を並べています。ひとつは、署名して提出する前に事実の主張も法的根拠も検証しなかったことです。もうひとつは、その失敗も書面に複数の虚偽が含まれることも依頼者に伝えなかったことで、理由開示手続が始まったことも書面の写しも依頼者には渡していませんでした。
裁判所は、応答と口頭弁論を検討したうえで、アーロンズ氏が「反省の欠如と依頼者への配慮の欠如」を示したと結論づけました。権限の根拠として挙がっているのは、州憲法6条3項が定める下級裁判所への監督権と、書面の要件を定める規則12-318、および違反に対する制裁を定める規則12-312(D)です。
制裁金は5,000ドルです。命令の日から30日以内に州弁護士会の依頼者保護基金へ支払い、支払いを終えたら書面で裁判所に届け出るよう命じられました。
出廷も止まりました。懲戒委員会の調査と手続が終わるまで、アーロンズ氏は同裁判所に出廷できません。本件は懲戒委員会へ付託され、その結果を受けて州最高裁がさらなる判断を行います。
事件そのものは巻き戻りました。これまでに提出された書面はすべて記録から削除され、公設弁護人事務所が被告人の代理人として選任されています。新しい弁護人の就任後に改めて書面提出の命令が出され、審理は2026〜2027年開廷期に行われる見込みです。
審問では、道具の種類が論点から外されました。ミシェル・ビジル裁判官は、正確性を検証する限りAIを使って法律論を書くことに問題はないと述べたうえで、「Cの学生の弁護士を使おうがAの学生の弁護士を使おうが、提出前に仕事を確かめなかったのなら同じです」と続けています。ベーコン裁判官も、1年目の弁護士が作り話を書いた書面に署名した場合と「まったく同じ窮地」だと言い添えました。
依頼者への影響にも時間が割かれています。ベーコン裁判官は、アーロンズ氏の応答から抜け落ちているものとして依頼者の被害を挙げ、ジュリー・バーガス首席裁判官は、身柄を拘束されたまま本件の決着を待つ刑事被告人の扱いこそがいまの関心事だと述べました。
アーロンズ氏は審問で、AI利用に関する適合証明書の添付を全件に義務づける常設命令を出すよう裁判所に求めています。裁判官らはこの提案を本題からの逸脱として扱い、問題は書面の正確性を確かめなかったことだと繰り返しました。
アーロンズ氏はニューメキシコ州で40年以上刑事弁護を担当してきた弁護士で、殺人事件の有罪判決に対する控訴のために依頼者の親族から依頼を受けていました。問題の書面を提出したのは2025年8月です。Ars Technicaへの声明では、当時はAIが事実そのものを幻覚しうると知らなかったとし、懲戒委員会が正直な誤りとして考慮することを望むと述べています。
命令は裁判官5名全員一致のper curiamです。規則12-405(B)に基づく先例性のない処分命令として出され、州の判例集への収録は見送られました。
- ChatGPT-using lawyer punished for citing fake testimony from made-up witnesses(Ars Technica)
- Dispositional Order of Direct Contempt(ニューメキシコ州最高裁 No. S-1-SC-40845・PDF)
AmazonがOpenAIと提携しChatGPTの会話内の広告枠をAmazon DSPで販売開始
Amazon Adsが、OpenAIと提携してChatGPTの会話内に表示される広告枠をAmazon DSP経由で買えるようにしたと発表しました。
対象は米国の一部広告主です。現時点ではパイロットとしての実施で、ChatGPT Adsそのものは日本でも提供されているものの、今回のAmazonとの統合は米国のプログラムに限られます。
売られているのはOpenAI側の在庫です。OpenAIが持つ「ChatGPT Ads」の枠を、Amazon DSPのマネージドサービスとして買えるようにする提携で、Amazonの担当チームがキャンペーンの設定と最適化を支援します。CPCとCPMの両方に対応します。
配信面の制御はOpenAIが握ります。広告をChatGPT内のどこにどう表示するかはOpenAIの広告システムが決め、Amazonは購入とキャンペーン管理のレイヤーを担う役割分担です。
ターゲティングにはAmazonのファーストパーティーデータを使えます。Amazon Adsの担当者は、広告を適切なトピックや会話やキーワードに合わせるための「コンテキストヒント」も提供するとしています。効果測定はインプレッション数・クリック数・結果単価・CPM・CPCの集計データで返ります。
広告が出るのはFreeプランとGoプランです。OpenAIは2月に米国のログイン済み成人を対象にテストを始めており、Plus以上の有料プランは広告なしのままです。同社は、広告に常にラベルを付けて回答と分離し、会話の内容を広告主に渡さず、顧客データの販売も行わないと説明しています。
背景には広告事業の急拡大があります。OpenAIの広告売上高は年換算で10億ドル規模に達し、ChatGPTの週間アクティブ利用者数は2月時点で9億人です。広告プログラムは50社を超えるアドテク企業と提携しており、今回Amazonがそこに加わりました。
Amazonは、自社のECサイトへのChatGPT・Claude・Geminiといった外部AIプラットフォームからのアクセスを厳しく制限してきました。広告の側では、その同じ相手の画面に自社の広告主を連れて行きます。
- Amazon Ads and OpenAI partner to bring advertising to ChatGPT(Amazon Ads)
- Amazon、OpenAIと広告で提携 Amazon DSPの広告主が「ChatGPT」内に広告出稿可能に(ITmedia NEWS)
OpenAIが10億人分のデータを支える社内ストレージ基盤Habitatを公開
OpenAIが、自社製品群の読み書きを引き受ける社内ストレージ基盤「Habitat」の内部を、公式のエンジニアリング記事で公開しました。
規模は3つの数字で示されています。毎秒7,000万件を超えるリクエスト、週あたり10億人を超える利用者、500ペタバイトを超えるデータです。稼働地域は40近くにおよびます。
出発点は小さなライブラリでした。Habitatは2024年半ば、ChatGPTの本体サーバーから単一のデータベースを叩くだけのPythonライブラリとして始まっています。製品エンジニアがスキーマの解決・ルーティング・認可・暗号化・接続プールを意識せずに済むようにするのが狙いでした。
成長のペースは、この3年間で毎年10倍を超えています。システムエンジニアは通常10倍の規模を見込んで設計し数年もつことを期待する、と同社は書いたうえで、自社の場合は毎年その10倍が来たと説明しています。
2025年半ばに、クライアント側の実装が限界を迎えました。ライブラリの変更が数十のサービスにまたがる調整を必要とし、あるときは機能フラグの投入とシャドーイングの追加とバグ修正でそれぞれ数日を費やしています。最後にフラグを有効化する段になって、あるチームが無関係な理由で古いクライアントへ巻き戻したため、回避しようとしていた障害がそのまま起きました。ここからHabitatは単独のサービスへ切り出されます。
設計の中心は、APIを絞ったことです。任意のSQLを書かせる代わりに、Habitatは単純なNoSQL APIだけを見せます。安く書けるクエリが高くつく不均衡を避け、要求のコストを予測可能な一定量に保つための明示的な取引だと説明しています。複雑な問い合わせは、変更データキャプチャで切り出したRockset側へ逃がします。
言語はPythonからRustへ移りました。2026年第2四半期に、エンジニア2名とCodexとGPT-5.5でサービス全体を書き直しています。Rust版はすでに本番リクエストの95%を処理し、Python版に比べてCPU効率が6倍・メモリ効率が15倍で、平均と末尾の両方でレイテンシが下がりました。Pythonは数週間のうちに廃止する予定です。
Pythonでどこまで行けたかも数字で出ています。ピーク時には毎秒2,000万件を超えるリクエストを捌いていました。
今回は2部構成の第1部です。第2部では、ストレージ層とAzure Cosmos DBとの連携、マルチテナンシーの信頼性、読み取り性能の最適化を扱うとしています。
そのほかの動き
モデル・API
- 中国の智譜(Z.ai)が、OCRモデル「GLM-OCR」のオープンウェイトをHugging Faceで公開しました。中国のラボからの文書処理向けオープンウェイト公開が続いています。 GLM-OCR(Hugging Face)
- Sakana AIが、新モデル「Fugu Ultra v2」はコーディングベンチマーク「DeepSWE」でGPT-6 Astra・Claude Fable 5.1・Claude Fable 5を上回ると自社発表しました。具体的なスコアは公表しておらず、比較対象の3モデルはいずれもFuguの連携先の外にあります。普及版の「Fugu Max」は、連携先にNVIDIAのオープンウェイトモデル群「Nemotron」を追加しました。 Sakana AI、一部「GPT-6 Astra」「Fable 5.1」超えうたうFugu最新版(ITmedia AI+)
プロダクト
- OpenAIが現地時間9月10日、月額200ドルのProプランの新規登録を一時停止しました。最新モデルAstraへの需要でシステム負荷が最も大きいプランのためだとし、プロダクト責任者のティボー・ソティオー氏は、できる限り広くアクセスを保つための最小限の措置だと説明しています。既存のPro契約者とAPI・Go・Plusは従来どおり利用できます。 OpenAI puts Pro subscriptions on hold due to Astra demand(TechCrunch)
- Metaが、AIチャットボットの提案プロンプトを変更すると表明しました。ある利用者が子どもと車内で歌う投稿の下に「同乗の子どもは誰か」と尋ねるプロンプトが出て、選ぶと娘の年齢や居住地を尋ねる追加質問が続いた動画が広がったためで、広報担当者は的を外した機能だったと認めています。Meta AIはFacebook・Instagram・WhatsApp・Messengerに組み込まれています。 Meta says it's changing AI suggestions after posing invasive personal questions(The Verge)
研究
- ターミナル出力を圧縮してAIコーディングのコストを下げるとうたうツール「RTK」について、Quesmaのベンチマークは逆の結果を出しました。Terminal-Bench 2.1で1,740回の試行を行ったところ、Claude Codeはコストが1%上昇して合格率が1%低下し、OpenCode(DeepSeek)はコストが17%上昇して合格率が2%低下しています。圧縮が追加のターンを誘発して節約分を打ち消すうえ、ターミナル出力は入力全体の7〜40%にとどまるとしています。 RTK reports token savings, but our cost benchmarks disagree(Quesma)
- チェンジホールディングス傘下のサーベイメディアが、全国の20〜50代1,104人にAIへの権限委譲を尋ねました。最終判断までAIに任せることを容認する割合は、20代で59.1%、50代で12.1%です。 「AIに任せる」はどこまで?(@IT)
政策・規制
- Anthropicが、生物兵器開発につながりうる研究にClaudeを使おうとする試みを今年複数回阻止したと公表しました。出典は脅威インテリジェンス報告(9月版)で、利用が禁じられているロシア・中国・イランの利用者を含みます。前日号で扱った無許可アクセス4件は、同社が別に公表したサイバーセキュリティ事案のアラインメント評価によるものです。鳥インフルエンザの実験を数週間かけて計画した事例では、安全フィルタが作業を最も能力の低いモデルに限定しました。同社は、科学者に加害の意図があったとまでは述べていません。 Claude users found ways around safeguards for bioweapons research(Ars Technica)
- 同じ脅威インテリジェンス報告(9月版)で、Anthropicは中国拠点のAI企業による蒸留キャンペーンの詳細も示しました。蒸留に関連する約2億回のやり取りを観測し、5つの別個のキャンペーンに帰属させたとしています。標的はエージェント能力とツール利用、コーディングとデータ分析、論理的推論です。Moonshotについては別スコープで、KimiからClaude Opusへ約30万件のリクエストを転送し2,300万件超の応答を集めたとする主張が示されています。 Anthropic details distillation campaigns from Alibaba, Moonshot AI, and DeepSeek(TechCrunch)
- 数学者のアンドレアス・トム氏が、OpenAIの学習データの出所をめぐる説明を不誠実だと指摘しました。OpenAIは先月発表した非ソフィック群に関する成果がトム氏らの先行研究に大きく依拠していたと認めて説明文を修正したものの、自分とChatGPTのやり取りが学習データに入ったかという質問への回答は、会話への直接アクセスの有無にしか触れなかったとしています。きっかけは、ニューヨーク大学のトリスタン・バックマスター教授が同種の疑問を公にしたことです。 Mathematicians want proof OpenAI didn't use their work(The Verge)
ビジネス
- 中国のMoonshot AIが、年内に年換算売上高20億ドルを目標に掲げていると報じられました。8月時点のランレートからの倍増を狙う水準で、オープンウェイトモデルK3はOpenRouter経由で1日最大3,000億トークンを生成しています。 Kimi-maker Moonshot AI targets $2B in annual revenue(TechCrunch)
- 英国のAIデータセンター企業Nscaleが、元OpenAI幹部のフィジ・シモ氏を取締役に迎えました。シモ氏はOpenAIでAGI部門を率い、7月に健康上の理由で退社したのちもパートタイムで助言を続けています。取締役会にはシェリル・サンドバーグ氏、スーザン・デッカー氏、ニック・クレッグ氏が名を連ねており、同社はこの秋の上場を見込んでいます。本紙は9月6日号で、同社がIPO前に35億ドルの調達を協議していると伝えました。 Nscale adds former OpenAI exec Fidji Simo to its board ahead of potential IPO(TechCrunch)
- NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが、Goldman Sachsのカンファレンスで来期70%成長の見通しを改めて示しました。先月の決算発表時のガイダンスの再表明で、アナリストの今期売上予想はおよそ4,000億ドル、70%成長なら来年は約6,800億ドル規模になるとTechCrunchは計算しています。Grace CPU36基とBlackwell GPU72基を組み合わせたシステムの受注は前月比27%の伸びで、フアン氏は今日のGPUが1基850万ドル・部品点数200万点だと説明しました。 Jensen Huang explains why Nvidia will grow an astounding 70% next year(TechCrunch)
- NECが9月1日に発表した「全員AIの部署」で、AI社員向けの1on1面談とストレスチェックを実施しました。支援の不足と状況説明の不足によるストレスが挙がっています。体制はAIガバナンス・AIダッシュボード・AIマネージャー・AIワーカーの4階層で、BluStellarプラットフォームを通じた国際展開を計画しています。 NEC「全員AIの部署」の衝撃(ITmedia ビジネスオンライン)
- 千葉県習志野市の「J-HRTI関東データファクトリー」で、ツムラや山善を含む5社のコンソーシアムがフィジカルAI向けの学習データを作っています。オペレーターがVRゴーグルとコントローラーでAgiBotのヒト型ロボットを遠隔操作し、頭部と両手首の3台のカメラで撮った映像に英語ラベルを付ける方式です。稼働は35台で、2027年度に全国10カ所へ拡大し、2028年度に産業特化型モデルの提供を始める計画です。 フィジカルAI向け「データ収集工場」に“潜入”(ITmedia AI+)
ソース: AIニュースインボックス(2026年9月12日収集・19件、一次3件・二次16件)から編集部が選定しました。